2004 年 65 巻 9 号 p. 2488-2490
症例は69歳,男性.右大腿部痛,発熱を認めたため当院を受診した.腹部CT検査で回盲部背側の後腹膜腔に膿瘍を認めた.膿瘍が限局されていたため,炎症の強い急性期の一期的な手術を避けまず保存的に経皮的ドレナージを施行し,炎症の落ち着いた時期に虫垂切除を行うinterval appendectomyを施行した.術中所見では虫垂先端のみが腫大し後腹膜と癒着しており,癒着部を剥離し虫垂切除を施行した.病理組織学的に虫垂先端の近傍の固有筋層を欠く仮性憩室とその周囲の炎症を認め虫垂憩室炎の後腹膜穿孔による後腹膜膿瘍と診断された.本症は急性虫垂炎と鑑別を要する比較的稀な疾患であり,穿孔率が高いため臨床上問題となることが多い.後腹膜膿瘍を形成することは稀で,自験例が本邦3例目の報告であるが,限局した膿瘍を形成した症例ではinterval appendectomyも治療法の選択肢の一つとなりうると考えられた.