抄録
症例は75歳,男性.左上腹部痛にて近医受診.超音波・注腸検査で異常なく対症療法を受けていたが改善せず当院へ紹介された.当院の超音波・CT検査では膵尾部を圧排する2.5cmの腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査で肛門から40cmに全周性狭窄を認めたが生検で悪性所見は得られなかった.同病変は注腸検査で横行結腸脾彎曲に認められた.血管造影検査では脾静脈の途絶と下腸間膜動脈造影で結腸狭窄部にほぼ一致した濃染像を認めた.化学療法を実施したが腫瘤に変化なく,結腸の狭窄も改善しなかった.横行結腸や膵尾部の腫瘍性病変も否定できず手術を施行した.膵尾部に硬い腫瘤を触知し,炎症は横行結腸周囲から左腎前面まで及んでおり膵尾部切除,脾摘,横行結腸部分切除術を行った.病理組織検索で膵尾部と横行結腸は著明な炎症性変化を示し横行結腸壁に放線菌塊を認めた.以上から本例は膵尾部に炎症が波及した横行結腸放線菌症と考えられた.