抄録
肝内結石症を伴った粘液産生胆管癌の切除例を経験したので報告する.症例は72歳の男性.肝左葉に局在する肝内結石症の診断で繰り返す胆管炎に対し,抗生物質投与,経皮経肝胆嚢ドレナージ術,内視鏡的乳頭切開術の治療歴があった.今回,発熱と悪寒戦慄を主訴に当院救急搬送され,腹部超音波, CTにて左肝内胆管の嚢状拡張と肝左葉の萎縮を認めた.肝内結石による胆管炎の再発と診断し,肝内結石症に対して手術を行った.術中,肝外側区域に白色調の腫瘍を認め,肝内結石症に合併した肝内胆管癌と診断し肝左葉切除術を施行した.切除標本では左外側上行枝に粘液を充満させた結節性病変とその肝門側にビリルビンCa結石を認めた.病理組織所見は粘液産生を伴う高分化型乳頭状腺癌の表層浸潤型であった.肝門側に肝内結石が嵌頓していた為に,粘液産生肝内胆管癌に特徴的な総胆管内への粘液の流出や画像上胆管内に透亮像を認め得ず診断に苦慮した.