日本臨床外科学会雑誌
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ガストログラフィンによる上部消化管造影で尿路が造影された腸閉塞の1例
松田 明久古谷 政一清水 康仁沖野 哲也佐々木 順平田尻 孝
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2005 年 66 巻 10 号 p. 2455-2458

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抄録

腸閉塞症例に対するガストログラフィンの消化管内投与にて尿路系が描出された1例を経験したので報告する.症例は52歳,女性で術後癒着性腸閉塞の診断で入院となった.ガストログラフィン120mlによる消化管造影8時間後の腹部X線写真検査でガストログラフィンは拡張した上部小腸内に停滞し,膀胱が明瞭に描出されていた.ガストログラフィンによる消化管造影後の尿路系の描出は,消化管穿孔を示唆する所見であるが,臨床所見から消化管穿孔は否定的であり保存的に経過観察を行い軽快した.通常,消化管内に投与されたガストログラフィンはほとんどが消化管から吸収されることなく通過し,糞便とともに排出される.しかし,穿孔性病変がなくても大量投与,小腸内での停滞,粘膜障害,脱水などの要因が存在すると消化管からの吸収が促進され,血中に移行し尿路系が描出されることを認識しておくべきであると思われた.

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