2005 年 66 巻 3 号 p. 697-701
症例は62歳,男性. 2003年12月下旬に腹痛を自覚し近医を受診し,精査にて膵頭部癌が疑われ, 2004年1月9日手術目的に当科紹介となった.腫瘍マーカーは陰性で,腹部CT・MRIでは膵頭部に約4cm大の腫瘤と周囲リンパ節の腫大を認めた. ERCPでは,膵頭部の主膵管に狭窄はあるが壁はスムースで,腹部血管造影検査では異常所見は認めず. FDG-PETでは膵全体に糖代謝充進を認めるも,悪性所見を思わせる限局した集積は認めず.以上より腫瘤形成性膵炎もしくは抗核抗体, IgG4の高値より自己免疫性膵炎などの良性疾患を疑い経過観察とした. 3カ月後の腹部CTでは膵頭部の腫大は改善し,周囲のリンパ節腫大も認めず. FDG-PETでも膵への集積は認めず.以上より一過性に膵頭部腫大をきたしたアルコール性膵炎であったと考えられた. FDG-PETは膵疾患において鑑別に非常に有用である検査方法であると考えられた.