2005 年 66 巻 5 号 p. 1085-1089
症例は61歳,男性. 2003年10月中旬より下血あり.その後腹痛および発熱を認め,翌日には症状が増悪したため,当院を受診した.腹部全体に自発痛あり,圧痛,筋性防御を認めた.ヘモグロビン値5.3g/dlと著明な貧血あり.腹部CT検査では小腸に連続する約7cm大の腫瘍を認めた.この腫瘍に関連した消化管出血と腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内には約100mlの膿汁汚染あり,腹膜炎の状態であった. Treitz靱帯より120cm部の小腸腸間膜側に7cm大の腫瘍を認めた.腫瘍は充実性の部分で腸管に連続し出血を伴い,嚢胞状の部分で穿孔していた.腫瘍を含めて約20cmの小腸切除を施行した.病理組織学的には中悪性度のGISTと診断された.小腸GISTは本来稀な疾患であり,消化管出血および穿孔による腹膜炎の両者の合併となると極めて稀と考えられたので報告した.