日本臨床外科学会雑誌
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手術既往のない胆嚢traumatic neuromaの1例
吉田 徹下沖 収馬場 祐康阿部 正菅井 有中村 眞一
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キーワード: 胆嚢腫瘍, 外傷性神経腫
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2005 年 66 巻 5 号 p. 1156-1160

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抄録

胆道系に発生する外傷性神経腫 (traumatic neuroma: 以下,本症と略記)は稀である.今回,手術既往がなく胆嚢に発症した本症を経験したので報告する.患者は68歳の男性で,検診で胆嚢の異常を指摘されて当院を受診した.腹部症状はなかったが,超音波検査, CT・MRCPなどの精査の結果,胆嚢腫瘍および胃粘膜下腫瘍疑いと診断され,胆嚢摘出術および胃部分切除術を施行した.胆嚢内に有茎性の3×1cmの隆起性腫瘤を認めた.病理組織検査では,胆嚢腫瘤は過形成上皮で被覆されており,腫瘤基部の胆嚢壁に線維化を伴う神経の増生が認められた.同部位はS-100蛋白陽性で本症と診断した.本症の発生には何らかの侵襲による神経の損傷を必要とする.本症例は手術歴や胆嚢結石の存在もなく,有茎性ポリープの牽引による物理的刺激が,その原因と推測された.胆道系腫瘍の鑑別に留意すべき疾患と考え報告した.

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