症例は68歳,男性.胸部異常陰影にて外来経過観察中,定期のCT撮影にて胃小彎側に壁外性に突出する5cm大の腫瘤陰影がみられた.大彎後壁よりに5cm程度の隆起性病変があり,粘膜下あるいは壁外から圧迫されていると考えられ,粘膜下腫瘍様であった.胃壁発生GISTの術前診断にて手術を施行した.開腹所見では胃壁には異常を認めず,膵上縁に黄白色の腫瘤がみられた.腫瘍は膵との連続性は強固ではなく,腫瘤摘出術のみで手術を終えた.嚢胞内腔は重層扁平上皮で覆われ,その直下にリンパ球がみられることから,膵リンパ上皮性嚢胞と診断した.また, CA19-9染色にて重層扁平上皮が陽性に染まり,本疾患と膵組織の関連が示唆された.画像上,胃の壁外発生のGISTとの鑑別を要した膵上縁に発生したリンパ上皮性嚢胞を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告した.