日本臨床外科学会雑誌
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食道癌術後在宅経腸栄養療法の評価
大塚 裕一國崎 主税秋山 浩利小野 秀高野村 直人山田 六平羽鳥 慎祐今田 敏夫渡会 伸治嶋田 紘
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2005 年 66 巻 5 号 p. 985-989

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抄録

食道癌手術術後の退院基準の選択肢として在宅経腸栄養療法 (HEN) を組み込むことの妥当性を検討するために,食道癌術後にHENを行った症例の解析を行った.術後経口摂取不良の原因では反回神経麻痺に関係するものが多く,そのためにHENが導入されていた.しかし, HEN導入症例の67% (24/36例)では,経口摂取不良の原因が明らかでなかった.詳細な評価可能なHEN施行群9例とHEN非施行群14例の比較では,術後在院期間 (p=0.90), 術後3, 6, 12カ月の体重変化 (p=0.97, 0.38, 0.11), 栄養指標 (prognostic nutritional index) の変化は (p=0.99, 0.91, 0.95) と差はみられなかった.また, 22.2% (8/36例)では, HENを施行したが術後12カ月体重が減少し続けHENの終了時期が不適切であったと考えられた. HENを行った患者およびその家族に対するアンケート (10例)の結果では,施行に困難を感じていた症例は少なかったが (10%), 施行上のサポート体制の充実を希望していた.術後経口摂取不良症例の退院基準のひとつとしてHENの導入を組み込むことが可能であり, HENの終了については,慎重に判断する必要があると考えられた.

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