日本臨床外科学会雑誌
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多発肝転移・腸間膜リンパ節転移・腹膜播種を伴った径8mmの回腸カルチノイドの1例
小林 靖幸戸田 央大場 宗徳
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2005 年 66 巻 7 号 p. 1643-1646

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抄録

症例は48歳,女性.持続する下痢を主訴に近医受診し, CTで腹部腫瘤・肝腫瘤を指摘され当院入院となった. CTでは腸間膜に6cmの腫瘤を認め,肝には3mmから15mmの腫瘤を50個以上認めた.肝生検でカルチノイド腫瘍の肝転移と診断され手術を施行した.開腹時多数の腹膜播種を認めた.腸間膜腫瘤は径6cmで周囲組織はこの腫瘤に向かい牽縮していた.腸間膜が広範に巻き込まれていたため十分な長さの回腸切除を伴う回盲部切除を施行した.原発巣は回腸にあり, IIa様で8×8mmであった.病理組織診断では深達度mpのカルチノイド腫瘍であった.腸間膜腫瘍はリンパ節転移で,周囲に著明な線維化を伴っていた.本邦では小腸カルチノイドは少ないがその転移率は高い.しかし自験例のように原発巣が8mmにもかかわらず大きなリンパ節転移を伴い,多発肝転移,腹膜播種までもきたした症例は非常に稀である.今後このような症例に対する集学的治療の確立が望まれる.

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