2005 年 66 巻 7 号 p. 1675-1679
症例は92歳の男性で,右下腹部の腹壁瘢痕ヘルニア部に瘻孔と血性浸出液を認めて,精査のため入院した.大腸内視鏡検査で皮膚瘻を形成した盲腸癌と診断して,腹壁瘻孔部を含めた回盲部切除術を施行した.病理検査結果では,中分化腺癌,粘液癌(瘻孔部), si(皮膚), n0, stage IIIaであった.術後経過は良好で,明らかな再発を認めなかったが, 3年10カ月後に他病死した.
大腸癌による皮膚瘻は比較的稀であり,本邦報告例は自験例を含めて25例である.自験例は盲腸癌のため症状の出現が遅れ,また癌浸潤部が粘液癌のため,腹壁へ高度に浸潤したと考えられた.さらに癌浸潤部に癒着,腹壁瘢痕ヘルニアがあったことで,皮膚瘻が形成されたと考えられた.