抄録
症例は45歳,女性. 20代から直腸粘膜脱症候群による治療抵抗性の症状に苦しんでいた.直腸Ra~Pにかけて全周性の潰瘍を認め,生検にてGroup4にて直腸癌を疑うとの生検所見を得たこともあり,腹会陰式直腸切断術を施行した.術中に腹水を認めたため細胞診に提出したところ,術後にclass V, adenocarcinomaの報告を得た.術中所見や術後の画像検査で明らかな卵巣腫瘍は認められなかったが,卵巣由来の腫瘍が強く疑われたため,再度開腹手術とし,子宮・両側付属器切除を施行した,病理診断は左卵巣悪性Brenner腫瘍であった.卵巣Brenner腫瘍は非常に稀な卵巣腫瘍で,そのほとんどは良性,悪性はその2~5%と非常に稀な腫瘍である.以上,直腸粘膜脱症候群に非常に稀な卵巣悪性Brenner腫瘍を合併した症例を経験したので報告する.