1991 年 32 巻 12 号 p. 1558-1563
慢性腎不全患者の悪性腫瘍合併率は年々増加傾向にあるが,透析の有無にかかわらず腎不全での抗癌剤の血中動態に関しては報告が少なく,治療に苦慮することが多い。今回われわれは維持血液透析中に急性骨髄単球性白血病を合併しBHAC, VP-16, VDS (BHAC-EV)療法により完全寛解に到達した症例を経験したので,この症例から維持血液透析患者におけるBHAC, Ara-C, VP-16の体内動態について検討した。その結果BHACは血液透析による影響は受けず,また腎機能障害者でも腎機能正常者と比較して血中濃度に差はなく安全に使用できた。Ara-Cの血中濃度にも相違はみられなかったが,透析により除去される可能性が示唆された。VP-16には透析性はなく,血中濃度は遷延し蓄積する傾向を認めたため腎機能障害者に対しては慎重に投与するべきものと考えられた。以上からBHAC-EV療法は血液透析患者に合併した急性白血病に対して安全に使用できる治療方法であるものと考えられた。