臨床血液
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症例
骨髄に著明な線維化を認めたIgD骨髄腫の1例
中村 浩彰坂本 昌隆若杉 和倫外山 圭助
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ジャーナル 認証あり

1991 年 32 巻 4 号 p. 395-398

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抄録

多発生骨髄腫と骨髄線維症の合併の報告は少ない。われわれは初診時骨髄の著明な線維化を認めた多発性骨髄腫の1例を経験した。症例は44歳女性。背部痛を主訴に来院した。初診時正球性正色素性貧血とM蛋白血症を認め入院となった。入院時WBC 2,100/μl, RBC 298×104l, Hb 7.6 g/dl, Pl 26.7×104l, 血清免疫電気泳動にてIgD-λのM蛋白を認め,IgDは5,420 mg/dlと著増していた。骨髄は頻回の穿刺にもかかわらず,胸骨・腸骨とも吸引不能であった。腸骨生検では,正常の造血細胞はほとんどなく,異型性のある形質細胞の増殖を認めた。同時に鍍銀染色にて好銀線維の著明な増殖を認め,線維化は著明であった。肝脾腫はなく,赤血球形態にて涙滴赤血球を認めず,いわゆる慢性骨髄増殖性疾患としての骨髄線維症の所見は認めなかった。多発性骨髄腫と骨髄線維症の合併は,臨床症状および経過において興味ある症候群であり,今後の検討が必要と思われる。

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© 1991 一般社団法人 日本血液学会
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