臨床血液
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シンポジウム4
白血病,リンパ腫における分子生物学的診断の展開
リンパ系腫瘍における新しい癌関連遺伝子の分離とその意義
大野 仁嗣
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1991 年 32 巻 6 号 p. 655-659

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抄録

14;19転座[t(14;19)(q32;q13)]は,prolymphocytoid transformationを示す慢性リンパ性白血病に認められる染色体異常である。われわれは,この転座の切断点を分子クローニングし,19番染色体の切断点の近傍に新しい遺伝子bcl-3を見いだした。14;19転座は免疫グロブリン遺伝子のα switch regionとbcl-3遺伝子の上流の間でおこり,2つの遺伝子が14q+染色体上でhead-to-headに再結合する。14;19転座を有する白血病細胞では,bcl-3遺伝子の発現が著明に昂進している。bcl-3遺伝子のコードする蛋白は中心部に特徴的な繰り返し配列を有し,cell cycleやcell lineageの決定に関与する蛋白と相同性が認められた。したがって,bcl-3は14;19転座を有する白血病の発症に関与する新しい癌関連遺伝子と考えられる。

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© 1991 一般社団法人 日本血液学会
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