t(14;18)(q32;q21)が認められるリンパ腫では,免疫グロブリン(Ig)遺伝子が
bcl-2遺伝子に近接することにより
bcl-2遺伝子が活性化されている。近接した両遺伝子は
bcl-2-Ig融合遺伝子を形成し,5'側が
bcl-2, 3'側がIgというキメラmRNAを形成するが,蛋白翻訳領域は変化せずに保たれる。活性化
bcl-2遺伝子を正常ヒトB細胞株に導入したところ,寒天内コロニー形成率は3+5倍に上昇したが,ヌードマウスに腫瘍は形成しなかった。本邦B細胞性リンパ腫における
bcl-2再構成を検索し,濾胞性リンパ腫32例中10例(31%), び慢性リンパ腫56例中5例(9%)に再構成を認めた。B細胞性リンパ腫,特に濾胞性リンパ腫発症頻度が米国に比較し本邦に少ないのは,
bcl-2再構成が少ないことが一因であることが示唆された。米国症例で報告の無い再構成様式を解析したところ,B細胞分化段階の進んだ時期に転座したことが示唆され,本邦において
bcl-2再構成が少ないのは,D
H-J
H結合時になんらかの原因で転座がおこりにくい機序が存在することによるのかも知れない。
抄録全体を表示