臨床血液
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32 巻, 6 号
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第32回総会
シンポジウム1
赤血球研究の最近の進歩
  • 神崎 曉郎, 和田 秀穂, 八幡 義人
    1991 年 32 巻 6 号 p. 573-579
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    当教室で検索し得た250例の赤血球膜骨格蛋白分子異常症,特に遺伝性楕円赤血球症(HE), 遺伝性球状赤血球症(HS)およびband 4.2異常症について,今回検討した。第1のHEでは常染色体優性遺伝を示した216 kDaのβ-spectrin分子異常症の1家系が発見された。異常β'-spectrinの含有量は患児7.6%, 母親10.5%であった。spectrin機能異常としては異常αβ'-spectrin dimerにはtetramer形成能が欠如していた。以上から本症例はHE Niceとはまったく異なる病型と考えられた。第2は染色体8 p11.2-8 p 21.1に欠失を認めた典型的HS症例について赤血球ankyrinとspectrinとの関連を検討した。本症例における染色体欠失の座には,SPH 1とankyrinの遺伝子座が存在するが,本症例のankyrinとspectrinの含有量はSDS-PAGE上正常であった。最後に,日本人に多いband 4.2欠損症が当教室で5例発見された。これらの症例の特徴は,(1)非代償性の溶血性貧血を認め,(2)赤血球形態はovalostomatocytosisを示し,(3)熱処理赤血球のektacytometryによる変形態は著しく低下を認め,(4) Western blot所見では膜蛋白band 4.2は全例に2本認められた。現在までに発見されているband 4.2欠損症をWestern blot所見からみると,以下の5型に分類される。(1) 72 kDaのみ,(2) 72 kDa+微量74 kDa, (3)微量72 kDa+微量74 kDa, (4) 72 kDa+微量68 kDa, (5)完全欠損,である。
  • 高後 裕, 近藤 仁, 平山 眞章, 対馬 伸泰, 伊藤 克礼, 新谷 直昭, 藤川 幸司, 宮崎 悦, 新津 洋司郎
    1991 年 32 巻 6 号 p. 580-586
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    赤芽球系細胞の増殖・ヘモグロビン合成に必須な鉄原子は,血清トランスフェリン(Tf)と結合し,赤芽球,網赤血球表面のトランスフェリン受容体(Tf·R)を介して,細胞内へ取りこまれる。Tf, Tf·Rともに再利用可能な機構をもち,細胞内への鉄は効率よく取り込まれている。Tf·Rの発現は,上記リサイクリング機構と,細胞内鉄イオン濃度の多募が直接影響する翻訳機構により調節されている。後者には,Tf·R mRNAの5'末端のループ構造(Iron responsible element, IRE)が関係している。われわれは,赤芽球表面に出現するTf·Rの一部が細胞外へ遊離し,血中の可溶型Tf·Rとして存在することをRIA法で報告してきた。今回は,この現象が,IL-3, erythropoietin存在下のin vitro赤芽球液体培養法で,赤芽球分化の過程で生じる現象であることを証明するとともに,血中での本レセプターの測定が,erythropoiesisを非侵襲的に把握する新しい方法であることを臨床例をあげて示した。
  • 服巻 保幸
    1991 年 32 巻 6 号 p. 587-591
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    PCR法を用いたグロビン遺伝子の解析を日本のβサラセミアを例により示した。アレル特異的オリゴヌクレオチドプロープを用いたドットブロッテイングにより既知変異に関するスクリーニングを行い,次にダイレクトシークエンシングやダイレクトクローニングによる塩基配列の解析を行い新しい変異を同定した。その結果プロモーター変異1種,スプライシング変異2種,フレームシフト変異2種,ナンセンス変異1種を見いだした。これらに加え極めて不安定なグロビン鎖を生じる変異を3種明らかにした。日本で見られたこのようなサラセミア変異の特徴につき,サラセミアとマラリア抵抗性との関係から考察を加えた。
  • 大原 行雄, 前 吉俊, 上原 好雄
    1991 年 32 巻 6 号 p. 592-598
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    MDSを含む各種血液疾患と肝疾患の赤血球フェリチン値を測定し,さらに等電点電気泳動(IEF)による検討を行い以下の結果を得た。MDSのRA, 急性骨髄白血病(AML), 巨赤芽球性貧血(PA), 遺伝性球状赤血球症(HS), アルコール性肝障害(AL)では赤血球フェリチン値の上昇する例が多かった。IEFによる検討の結果,MDSのRAでは健常人(pI 5.1-5.7)の値より酸性にシフトするもの,近似するもの,塩基性にシフトするものの3型に分かれる傾向をみせ,骨髄における赤芽球系細胞の形態異常が強いほど酸性側にシフトすることが窺われた。AML, PAでは健常人にほぼ等しく,慢性骨髄性白血病(CML), 真性赤血球増加症(PV), 鉄欠乏性貧血(IDA)では少量のフェリチンがやや塩基性にシフトしてみられた。HSでは病態,病期により一定せず,ALでは肝細胞内の鉄沈着を反映して塩基性にシフトしていた。赤血球フェリチンの測定は造血状態,鉄代謝を知る良い指標と考えられた。
  • 神奈木 玲児, 銭田 晃一, 恒松 徳五郎
    1991 年 32 巻 6 号 p. 599-605
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
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    自己免疫性溶血性貧血のうち,寒冷凝集素症や発作性寒冷血色素尿症に出現する抗赤血球自己抗体の認識抗原は,分化抗原(differentiation antigen)ないしは発育抗原(developmental antigen)としての生理的意義をもつ糖鎖抗原であり,より複雑な構造を有する糖鎖性の同種抗原の合成前駆体である。ヒトのみならず,マウスなどでもこれらの抗原は分化抗原としての意義をもっており,系統発生的によく保存された分化発育抗原であると考えられる。これらの抗原分子は,ヒトにおいても他の動物においても,病原微生物が感染する際の宿主側のリセプターとしてしばしば機能している。これらの抗原に対する抗体においても,マウスの抗体のV領域のシクエンスと,ヒト抗体のV領域に想定されるシクエンスとの間にかなり高い相同性が認められ,抗体側も系統発生的によく保存されたV領域遺伝子によってコードされると推定された。
  • 中熊 秀喜, 川口 辰哉
    1991 年 32 巻 6 号 p. 606-611
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    発作性夜間血色素尿症(PNH)における赤血球の補体感受性亢進の原因の1つとしてグリセロ糖脂質にアンカーしたDAFなどの細胞膜補体制御因子の欠損が明らかにされ,しかもアンカー部に共通の異常が指摘されている。PNHでは膜糖蛋白の発現異常も知られ,これらのことから細胞膜複合糖質の代謝異常の存在が推定される。そこで残りの主要複合糖質であるスフィンゴ糖脂質(GSL)の発現異常を検索する目的でPNH 7例および健常人赤血球膜からGSLを分離精製しその発現様式を解析した。その結果,ガングリオシドはPNH全例で発現異常が見られ,特にPNHクローンの出現と対応してIV6 NeuAc-nLc4 Cerの欠損が認められた。ほかにも,より極性の高いガングリオシドの発現異常も検出されたが,中性画分には変化を認めなかった。実験結果はGSLの糖代謝異常を示唆していた。このようにPNHは赤血球膜複合糖質代謝異常としての側面を有するものと考えられる。
  • 二宮 治彦, 小林 敏貴, 阿部 帥
    1991 年 32 巻 6 号 p. 612-617
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    PNH赤血球膜上の主要補体制御膜蛋白DAFおよびCD59の欠損の意義について検討した。DAFとCD59は,FACSを用いた解析によりPNH-III型赤血球上で同時に欠損していることが示された。また,少なくとも一部のPNH患者においてPNH-I型赤血球でDAFが部分欠損していることが明らかとなった。精製DAFおよびCD59を添加するとそれぞれ部分的および完全にPNH赤血球の補体感受性は改善した。DAFおよびCD59に対する単クロン抗体により正常赤血球上のDAFおよびCD59分子の機能を阻害するとA型,AB型赤血球は補体感受性となるものの,O型,B型赤血球は補体感受性とならなかった。この血液型間の補体感受性の差はC9のC5b-8への結合の段階にあることが判明した。すなわちC9はO型赤血球よりA型赤血球上のC5b-8により多く結合する。DAFとCD59の欠損はPNH赤血球の補体感受性に主要な役割をしており,他の因子の欠損はこれら2つの蛋白に比し重要なものではない。
シンポジウム4
白血病,リンパ腫における分子生物学的診断の展開
  • 川上 恵基, 池田 健, 北 堅吉, 白川 茂
    1991 年 32 巻 6 号 p. 618-622
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    多潜能幹細胞にその腫瘍細胞の起源をもつと考えられる,いわゆる幹細胞性白血病(Stem Cell Leukemia; SCL)を示唆する表現型,遺伝子型の発現様式を272例のde novo急性白血病につき検討した。AML 132例,ALL 140例。AMLのうち,CD7およびCD19といったリンパ球分化の最初期より発現される抗原を有するものがTdTの発現も高率であり,骨髄系増殖因子に対してもIL-3に最も反応し,SCLである可能性が高いと考えられた。ALLでは,リンパ球系抗原のうちCD7およびCD19(いずれか,あるいは共に)のみ発現し,骨髄球系抗原を同時に発現しているものが,やはりIL-3, GM-CSFといった増殖因子に反応し,経過中AMLにlineage switchした例もみられたことから,SCLであると考えられた。なお,pre B ALLに高頻度にみられる二重遺伝子型は,B細胞にこの分化段階における活発な遺伝子再構成時に二次的に生じたものとみなされ,SCLを示唆するものではないと思われる。
  • 国枝 保幸, 岡部 実裕
    1991 年 32 巻 6 号 p. 623-628
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    Ph1陽性白血病において,現在臨床上問題となっているbcr遺伝子の切断点,Ph1陽性ALL細胞の細胞帰属やCML急転における分子遺伝学的機序についての解析結果を報告する。47症例のCMLの切断点は全例M-bcrに存在すると考えられたが,9症例のPh1陽性ALLのうち4例ではM-bcr内での再構成は示さず,そのうち2症例の切断点は,bcr遺伝子のintron1内の領域(bcr-2, bcr-3)存在すると考えられた。Ph1陽性ALLでは,biphenotypeあるいはbiclonalのhybrid症例が多い。われわれの樹立した2株のPh1陽性ALL細胞を用いたin vitroの検討で,monocyteへの分化能を有することから,その細胞起源はmultipotent stem cellの可能性が示唆された。CML急転におけるrasやfms遺伝子の点突然変異による活性化の関与は否定的と考えられたが,p 53遺伝子の解析では,CML-BC2症例およびCML-BC由来の細胞株2株でその発現に異常がみられ,急転におけるp 53遺伝子の関与の可能性が示唆された。
  • 麻生 範雄
    1991 年 32 巻 6 号 p. 629-635
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    T細胞白血病やリンパ腫における免疫グロブリン重鎖(IgH)およびT細胞受容体(TCR)の遺伝子再構成と発現を検索した。TCRβ, γ鎖はほとんどのT細胞腫瘍で再構成していた。TCRδ鎖は77例のT細胞腫瘍の全例で再構成ないし欠失していた(CD 3陰性の9例中6例は再構成,CD 3陽性の68例中65例は両対立遺伝子ともに欠失)。未熟T細胞腫瘍の1例ではδ鎖のみの再構成を認めた。CD 3陰性T細胞腫瘍の多くはTCRγδ鎖の発現を認めるのに対し,CD 3陽性例の大半はαβ鎖の発現を認めた。6例のCD 7のみ陽性例では2例にのみIgH, TCRγ, δ鎖の再構成と発現を認めた。また,CD 4- CD 8-例を提示する。1例はγδ鎖陽性のLGL, 1例はαβ鎖陽性のATLである。これらの結果はT細胞腫瘍もまた正常T細胞の分化系列と分化階段の遺伝子形質と表現型をよく反映していることを示唆する。
  • —PCR法によるアプローチ—
    宮下 俊之, 浅田 穣, 水谷 修紀
    1991 年 32 巻 6 号 p. 636-643
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    Ph1染色体陽性急性リンパ性白血病(S1)およびそこから樹立された細胞株(KOPN 30 bi-中沢ら)を用いてIgH, TCRβ, γ, δ鎖遺伝子の解析を行った。IgH鎖遺伝子は両者でまったく同様の再構成を示したことからこれらがまったく同一のクローンであることが証明された。KOPN 30 biではTCRδ, βがそれぞれD/R, G/R, S1でTCRδ, βがそれぞれD/D, GであったことからKOPN 30 biがS1から由来したものであることは否定された。TCRγ鎖遺伝子が両者で異なった再構成を示したことからKOPN 30 biのTCRγ鎖V領域の遺伝子配列をPCR法により決定し,これをプローブにしてS1を解析したところKOPN 30 biはS1の中の1%に満たないことが明らかになった。このことは初発時優勢を占めるクローンが腫瘍化の標的細胞の特徴を示していないことを意味しており,腫瘍が腫瘍化の後も分化していくことを意味していると考えられた。
  • 瀬戸 加大, 長田 啓隆
    1991 年 32 巻 6 号 p. 644-649
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    t(14;18)(q32;q21)が認められるリンパ腫では,免疫グロブリン(Ig)遺伝子がbcl-2遺伝子に近接することによりbcl-2遺伝子が活性化されている。近接した両遺伝子はbcl-2-Ig融合遺伝子を形成し,5'側がbcl-2, 3'側がIgというキメラmRNAを形成するが,蛋白翻訳領域は変化せずに保たれる。活性化bcl-2遺伝子を正常ヒトB細胞株に導入したところ,寒天内コロニー形成率は3+5倍に上昇したが,ヌードマウスに腫瘍は形成しなかった。本邦B細胞性リンパ腫におけるbcl-2再構成を検索し,濾胞性リンパ腫32例中10例(31%), び慢性リンパ腫56例中5例(9%)に再構成を認めた。B細胞性リンパ腫,特に濾胞性リンパ腫発症頻度が米国に比較し本邦に少ないのは,bcl-2再構成が少ないことが一因であることが示唆された。米国症例で報告の無い再構成様式を解析したところ,B細胞分化段階の進んだ時期に転座したことが示唆され,本邦においてbcl-2再構成が少ないのは,DH-JH結合時になんらかの原因で転座がおこりにくい機序が存在することによるのかも知れない。
  • 安達 正晃, 今井 浩三, 谷内 昭, 辻本 賀英
    1991 年 32 巻 6 号 p. 650-654
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    多数の濾胞性リンパ腫(欧米において約90%, 本邦において約30%の濾胞性リンパ腫)の腫瘍細胞はt(14;18)染色体転座を有しており,この転座のために第14番染色体上にある免疫グロブリンH鎖(IgH)と第18番染色体上にあるbcl-2遺伝子が融合遺伝子を形成していることが判明している。bcl-2遺伝子側における染色体切断部位は,ほとんどの例がhot spotすなわち第2エクソン内(mbr)もしくは遺伝子3'下流(mcr)の2箇所に集中している。これに対し約10%のB細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)においては,遺伝子5'上流部位で切断されたbcl-2遺伝子が,head to headに免疫グロブリンL鎖(Igλ, Igκ)と連結していることを見いだした。こうしたことは,濾胞性リンパ腫とB-CLLにおけるbcl-2遺伝子の活性化機序の相違を予想させ興味深い。
  • 大野 仁嗣
    1991 年 32 巻 6 号 p. 655-659
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    14;19転座[t(14;19)(q32;q13)]は,prolymphocytoid transformationを示す慢性リンパ性白血病に認められる染色体異常である。われわれは,この転座の切断点を分子クローニングし,19番染色体の切断点の近傍に新しい遺伝子bcl-3を見いだした。14;19転座は免疫グロブリン遺伝子のα switch regionとbcl-3遺伝子の上流の間でおこり,2つの遺伝子が14q+染色体上でhead-to-headに再結合する。14;19転座を有する白血病細胞では,bcl-3遺伝子の発現が著明に昂進している。bcl-3遺伝子のコードする蛋白は中心部に特徴的な繰り返し配列を有し,cell cycleやcell lineageの決定に関与する蛋白と相同性が認められた。したがって,bcl-3は14;19転座を有する白血病の発症に関与する新しい癌関連遺伝子と考えられる。
  • 巽 英二, 米田 規子
    1991 年 32 巻 6 号 p. 660-668
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    再活性化抗体価は増殖細胞の担EBVを意味しないが,先行するIM, 顕著な髄外性増殖,バーキット・リンパ腫との類似などの特徴を持つ例では強く担EBVが疑われる。内部反復配列(Bam HIW)およびLMP(終末反復配列接合部構造を示す)プロウブを用いて,良性多クローン性CD3·8陽性細胞増殖例,CD3陽性4·8陰性顆粒リンパ球増多例,t(14,22) B細胞リンパ腫例などの担EBV例や,再活性化抗体価を示していて非担EBVである数症例での検索結果を例示した。IM急性期の数日おきの連続採取した末梢血細胞でEBV·DNAの検出を試み,まれであはあるが最初の材料で検出が可能であり,PCRにより確かに検出感度が上がる。IL-2Rβの発現およびIL-2Rαの非発現についてノーダン・ブロットで確認した。殺細胞作用の期待されるIM細胞ではあるがペルフオリンRNAの発現は認めなかった。
臨床研究
  • 梅田 正法, 白井 達男, 塚原 敏弘, 金子 晴生, 山内 幹雄, 新井 望, 小菅 孝明, 加藤 元浩, 志越 顕, 安濃 周威知, 蘇 ...
    1991 年 32 巻 6 号 p. 669-674
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,多発性骨髄腫における天然型α-インターフェロン(HLBI)とVCAPの併用療法をVCAP療法単独と比較した。16名の未治療の多発性骨髄腫患者をHLBIとVCAPの併用療法によって治療,そのうち9名は寛解導入療法としてHLBI-VCAP (I)療法(HLBI 3×106単位/日,連日56日間筋注)を,7名は寛解導入療法と維持療法の両方に対して持続的なHLBI-VCAP (II)療法(HLBI 3×106単位/日,週2回筋注)を行った。31名の患者はVCAP療法のみにより治療された。寛解率はVCAP療法のみでは74.2% (23/31), (I)療法では77.8% (7/9)であるのに対し(II)療法では85.7% (6/7)であった。生存期間の中央値はVCAP療法のみでは43カ月,(I)療法では44カ月以上,(II)療法では45カ月以上で,VCAP療法のみとHLBI-VCAP併用療法の間にまだ有意差はなかった。寛解導入療法と維持療法の両方に長期にIFN-αをVCAP療法と併用するほうがより有効であり,intensiveなHLBI-VCAP療法はVCAP療法単独よりも良いとはいえないと考えられた。
  • 中鉢 明彦, 三浦 亮, 西村 茂樹, 秋浜 哲雄, 桑山 明久, 斉藤 昌宏, 綿貫 勤
    1991 年 32 巻 6 号 p. 675-680
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    10例の鼻腔,副鼻腔原発非ホジキンリンパ腫(NHL)をadriamycinを含んだ化学療法と局所照射療法で治療した。4例は鼻腔原発,6例は副鼻腔原発であった。Ann Arbor病期分類ではI期5例,II期4例,IV期1例であった。TNM AJCによる病期分類では4例がT1-T2, 6例がT3-T4であった。病期IVの1例を除く9例で寛解が得られたが,3例は全身再発し,診断後9∼39カ月で腫瘍死した。2例は寛解のまま、それぞれ急性骨髄性白血病,大腸癌にて診断後26∼53カ月で死亡した。4例は診断後,23∼68カ月(中央値40カ月)で健存中である。臨床病期別にみるとT1-T2では4例中1例,T3-T4では6例中3例で腫瘍死が起こった。鼻腔原発のT1の2例はいずれも健存中(51∼68カ月)である。鼻腔,副鼻腔原発NHLの一層の治療成績の向上のためには鼻腔原発,病期T1の症例を除いてはより強力な化学療法の導入が必要である。
症例
  • 井本 しおん, 伊藤 光宏, 中川 俊太郎
    1991 年 32 巻 6 号 p. 681-685
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)は,悪性腫瘍と反応性病変の中間に位置づけられるが,2年生存率は約30%と予後不良の疾患である。今回われわれは,ステロイド剤および化学療法に抵抗性のAILDに対し,recombinant Interferon α2a (α-IFN)を投与し著効を示した症例を経験した。症例は62歳女性。発熱と頚部リンパ節の著明な腫脹で発症。多クローン性高グロブリン血症と異型リンパ球出現を認め,リンパ節生検でAILDと診断した。当初はプレドニゾロン(PSL)によく反応したが,2カ月後にステロイド抵抗性となったため,悪性リンパ腫に対する化学療法を施行した。しかし7カ月後には化学療法抵抗性となった。ここでα-IFN(300万単位/日筋注)を試みた。翌日より解熱し,リンパ節腫脹も次第に消退,現在まで3カ月間寛解状態を維持している。
  • 刀塚 俊起, 小川 良一, 藤井 康和, 鈴木 みずね, 松井 利充, 中尾 実信, 磯部 敬, 藤田 拓男
    1991 年 32 巻 6 号 p. 686-689
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    われわれはIgA λ-type多発性骨髄腫にて唾液型アミラーゼ産生している症例を経験したので報告する。患者は70歳男性。貧血と腎機能障害により入院して,単クローン性IgAの高値を認めた。化学療法後に唾液型アミラーゼの上昇が始まり,骨髄細胞培養液上清中アミラーゼ活性の上昇を認めた。また骨髄細胞はMDR-1/P-糖蛋白陽性を示した。唾液型アミラーゼ産生が認められた多発性骨髄腫はきわめてまれであり,MDR/P-糖蛋白が見られた症例はほかにない。薬剤耐性との関連も示唆される。
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