1991 年 32 巻 9 号 p. 945-950
下血を主訴に入院した第VIII因子阻害抗体陽性血友病患者の止血管理および阻害抗体の性状について検討した。症例は44歳,男性。内視鏡検査で露出血管を伴う出血性胃潰瘍を認めた。入院時の第VIII因子阻害活性は66 Bethesda単位/mlで止血の目的に活性化プロトロンビン複合体製剤を輸注し,経内視鏡的に組織損傷を伴わないclippingによる止血処置を施行し効果を認めた。患者の阻害抗体はSephacryl S 200, Protein A columnで精製して,IgG分画にその存在を確認した。この抗体の認識するepitopeをmonoclonal抗体精製第VIII因子製剤を抗原として,Western blot法で検討したところ,阻害抗体は分子量160-200 kDの第VIII因子heavy chainを認識しており,またdot blot法によるサブクラス解析ではIgG1, IgG2およびIgG4に属した。一方,他例の血友病患者第VIII因子阻害抗体は,分子量約80 kDの第VIII因子light chainを認識し,IgG1およびIgG4に属した。