臨床血液
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症例
IgA (κ)型M蛋白が消失し,多クローン性高グロブリン血症に移行した腫瘤形成型骨髄腫の1例
脇田 待子小谷 重光瀬崎 達雄村上 元正石井 廣文星島 俊彦中山 志郎
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1991 年 32 巻 9 号 p. 964-969

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抄録

77歳,女性。1983年1月右鎖骨髄瘤の生検により比較的成熟した形質細胞よりなる形質細胞腫と診断され,肋骨腫瘤と多発性の骨融解像を認めた。血清蛋白量7.5 g/dl, M蛋白は2.1 g/dl, IgA (κ)型であった。骨髄像では,有核細胞数31.3×104l, 成熟型形質細胞が21%であった。同年3月より化学療法を開始,4カ月後には腫瘤は縮小,M蛋白は免疫固定法でも消失したが,その後γ-globulinは24.6%, IgGは1,980 mg/dlと増加した。同年12月右鎖骨,次いで肋骨腫瘤は再度増大し,1984年5月の生検所見では未熟な形質芽球様細胞がびまん性に増殖し,酵素抗体染色では抗κ鎖にのみ陽性であった。1984年8月から全身性多発性皮下腫瘤の急速な増大に伴って,IgGは3,356 mg/dlで,polyclonalな増加を示し,骨髄像では成熟形質細胞が7.4%であった。同年12月,多発性の腸管膜腫瘤によるイレウスを合併し死亡した。腫瘤形成型骨髄腫における化学療法によるM蛋白の消失と,正常免疫globulinの変動について考察した。

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© 1991 一般社団法人 日本血液学会
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