1991 年 32 巻 9 号 p. 981-985
症例は25歳,女性。昭和60年3月に性交後の持続出血にて入院。プロトロンビン時間16.7秒,活性化部分トロンボプラスチン時間92.1秒と延長,凝固因子活性はF. V:C 14%, F. VIII:C 12%と低下していた。vWF:Ag, Protein C抗原,Rcofは正常,Protein C inhibitorは軽度低下を示し先天性第V第VIII因子合併欠乏症と診断した。DDAVP投与により,Rcof, vWF:Ag, F. VIII:Cは上昇したがF. V:Cには変化を認めなかった。4年後妊娠期間中にF. V:Cは低値を持続したがF. VIII:Cは70%へと自然上昇し経膣分娩が可能と考えられた。しかし,前期破水と回旋異常をきたしたため,第VIII因子製剤投与下での帝王切開術を施行,異常出血は認めなかった。DDAVPと第VIII因子製剤は本疾患の分娩管理に有用であると考えられたが,正常婦人の妊娠経過と同様にF. VIII:Cが上昇した点は,その機序と共に無処置での分娩の可能性を示すと思われた。