臨床血液
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症例
各臨床病期に癌遺伝子の発現を検討し得たMDS由来のAMLの1例
藤川 透堀口 順子飯塚 拡応根本 忠岩瀬 さつき山村 成子稲葉 敏山崎 泰範佐野 茂顕山田 尚
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1991 年 32 巻 9 号 p. 986-990

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抄録

MDSの1症例について経時的癌遺伝子の発現変化を検討した。患者の骨髄は初期には末梢血,骨髄ともに臨床病態に反応しており,ある程度その機能が保たれていた。しかし,造血機能はAMLへの病態進行とともに徐々に障害されていった。このMDSからAMLへの移行を研究するため,患者の3病期,早期RAEB-t, RAEB-tおよびAMLについて単核球における4つの癌遺伝子の発現を調べた。早期RAEB-tにおいては検討した癌遺伝子のうちc-mybを除きすべての発現を認めた。しかし,RAEB-tではc-mycのみの発現であった。AMLではc-fmsを除きすべての発現を認めた。早期RAEB-tにおけるc-fmsおよびc-junの発現は感染症により惹起された単球増多を反映しているものと考えられ,また,AMLにおけるc-mybやc-mycの発現は,腫瘍細胞のより悪性化した証拠とみなせた。これらのことはMDSからAMLへの転化が,癌遺伝子の異常な発現に左右されていることを示唆しているものと考えられる。

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© 1991 一般社団法人 日本血液学会
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