抄録
遺伝性楕円赤血球症(以下HEと略)は,一般に赤血球の膜蛋白骨格の異常に起因すると考えられているが,β鎖の異常の報告例は数少ない。今回著者らは,HEの母児にβ spectrin異常の新しいタイプを認めたので報告する。発端者は8カ月の女児。入院時軽度の貧血と網状赤血球の増加,ハプトグロビン低下を認めた。発端者および母親の末梢血塗抹標本で楕円赤血球を認めHEと診断した。本症例の赤血球膜蛋白の分析をSDS-PAGEで行ったところ,母児ともにspectrin鎖直下に異常bandを認めた。さらに母親について詳細な検討を行ったところ,この異常bandはβ spectrinで,分子量は216,000 dであり,β spectrinの16%に相当していることが判明した。さらに,本症例ではspectrinの重合能の異常を認め,spectrin αの異常を合併していることが判明した。本症例の遺伝形式は常染色体優性遺伝で,従来報告されているβ spectrin異常症とは異なった疾患であると考えられた。