1992 年 33 巻 9 号 p. 1204-1209
自家末梢血幹細胞移植術(PBSCT)を施行した小児白血病・悪性リンパ腫(NHL)患者32名について,varicella-zoster virus感染症(VZV)の発生を検討した。移植前療法には,全身放射線照射(TBI)を用いず,超大量化学療法のみを行った。移植後16∼371日(平均112.1日)に,皮膚限局性のVZVが32名中14例(43.8%)に発症した。このうち12名にはacyclovirの単独静脈内投与を行い,2名には水痘高力価γ-globulin製剤の静脈内投与も併用した結果,全例治癒し,再燃や死亡例はなかった。VZV発症の危険因子の検討では,VZVの既往のある群がない群より高頻度にVZVを発症した(P=0.008)。またVZV発症群と非発症群との比較検討では,発症群の無病気生存率が非発症群に比べて有意に高かった(P<0.05)。TBIを用いないPBSCT施行後にも,VZVは高頻度に発生するものの重症例は少なく,またVZVがPBSCT後の白血病・NHL再発を防止する可能性が推察された。