臨床血液
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33 巻, 9 号
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総説
臨床研究
  • —組織型,病期別による検討—
    曽我 哲司, 野村 昌作, 木戸 洋文, 山口 和之, 袋井 力, 柳父 睦政, 粉川 皓年, 安永 幸二郎
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1121-1127
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    未治療の肺癌症例(腺癌16例,扁平上皮癌14例)の血小板膜表面に結合しているフィブリノーゲン,フィブロネクチン,トロンボスポンジン(以下PA-Fbg, PA-FN, PA-TSP)と血漿中のTSP (P-TSP)をフローサイトメトリーで,β-TGとPF 4をELISA法にて測定し検討した。その結果β-TGとPF 4は健常者と比較して有意に高値を示し,またPA-Fbgと正の相関関係を示した。各粘着蛋白は健常者と比べ高値を示し,その程度は病期の進行と共に増加傾向を示した。また扁平上皮癌群でP-TSPは有意に高値を示し,腺癌群ではPA-TSPが高値を認めた。血小板サイズは病期の進行と共に大型の血小板が増加した。以上より肺癌患者では活性化血小板が存在していること,血小板の破壊,産生が亢進しておりその程度は病期の進行と共に増加すること,組織型により粘着蛋白の動態に差があることが示唆された。
  • 菅野 陽子, 佐久山 雅文, 新津 秀孝, 伊藤 俊広, 李 宗泰, 大谷 浩, 中本 安, 三浦 亮, 秋浜 哲雄, 山口 昭彦, 西村 ...
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1128-1135
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    秋田県を中心として,ここ20年間に診断された慢性骨髄性白血病91例の腎電解質異常を検討した。診断時,腎機能・電解質の検査を行なっている症例は,CP=chronic phase 65人,AP=accelerated phase 5人,BC=blastic crisis 2人であるが,低Ca血症12.9%, 高P血症10.4%を認め,高P血症をきたした症例と腎障害が存在する症例では,生存期間が有意に短かった。初回治療後は,著しい変化はなかった。また急性転化時の電解質異常は,低Na, 低K, 高K, 低Ca, 低P, 高P血症の傾向があり,最終入院時では各々50%以上を占め,腎障害も50%に認められた。剖検腎組織所見では,急性尿細管不全または壊死,急性高Ca腎症および高度の腎実質浸潤を認めた症例で,生前の腎障害が存在していた。
  • 角田 三郎, 吉田 稔, 高木 省治郎, 佐々木 龍平, 室井 一男, 星野 充明, 和泉 透, 今川 重彦, 依馬 秀夫, 鈴木 俊之, ...
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1136-1143
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    myeloperoxidase (MPO)およびSudan Black B陽性率が3%未満,esterase染色陰性,リンパ球系,巨核球系,赤芽球系の表面マーカ陰性,電顕のplatelet peroxidase陰性の急性白血病(AL)を急性未分化型白血病(AUL)と診断し,骨髄系表面マーカー(CD13, CD33), 電顕MPO (EMMPO), 免疫グロブリン重鎖およびT細胞受容体のDNA解析,化学療法とその反応性を検討した。ALの239例の内10例(4.2%)がAULで,その内CD13もしくはCD33陽性のAML-MO (MO)症例は9例であった。EMMPOは9例検討し,4例(44%)陽性で,MOの3例にDNA解析を施行し,1例に免疫グロブリン重鎖の再構成を,1例にT細胞受容体β鎖の再構成を認めた。AMLベースの化学療法をMOの6例に行い完全寛解(CR) 1例,部分寛解(PR) 1例でいずれもリンパ系の遺伝子型を持っていた。無効(NR)の4例中3例はEMMPO陽性であった。ALLベースの化学療法を2例に行いCR 1例,NR 1例で,CR例はEMMPO陽性のMOであった。behenoyl cytosine arabinoside, VP-16, mitoxantroneによるBHAC-EM療法はAMLベース,ALLベースいずれの導入療法にもNR症例で,2例中2例ともCRとなった。
  • —ヒト骨髄間質細胞の増殖動態およびその造血支持能に及ぼす代謝拮抗剤の影響—
    松崎 敏朗, 植木 康文, 出口 静吾, 村瀬 敏夫, 谷水 将邦, 頼 敏裕, 大本 英次郎, 高橋 功, 木村 郁郎
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1144-1150
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    Dexter培養法変法の長期液体培養系を用い,ヒト骨髄間質細胞の増殖動態およびその造血支持能に及ぼす代謝拮抗剤の影響について検討した。ara-Cでは,骨髄間質細胞の増殖動態および造血支持能共に抑制傾向が認められなかったが,MTXでは,骨髄間質細胞の増殖動態は抑制を受けなかったものの,造血支持能は抑制を受けた。これらの結果は,今後の化学療法方法論を考えるうえで重要であり,また骨髄移植の前処置薬剤の選択の際,一つの有力な情報を提供すると考えられた。
  • 高木 美穂, 宮本 貴由, 小阪 昌明, 斎藤 史郎
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1151-1157
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    骨髄腫(MM)患者の貧血に対するエリスロポエチン(Epo)の関与を検討するため,MM患者53例と,対照として正常人および再生不良性貧血(AA)患者などの他の血液疾患患者の血清Epo濃度をラジオイムノアッセイにより測定した。MM患者の血清Epo濃度は72.0±94.4 mIU/ml (mean±SD)で,正常人(24.1±6.1 mIU/ml)と比較すると有意に高値であったが,AA患者(7069.9±9406 mIU/ml)よりは低値であった。また,MM患者の血清Epo濃度の対数値はHb値と有意な負の相関(r=-0.543, p<0.05)を示し,腎障害のないMM患者ではさらに負の相関(r=-0.636, p<0.05)が強くなった。このことは,腎障害のあるMM患者ではEpo産生が低下していることを意味し,Epoの補充療法が貧血の改善に有効と考えられた。MM患者血清Epo濃度の日内変動は,正常人と同様に朝低く夜高いパターンを示した。また,MM患者における化学療法後の血清Epo濃度の変動はHb値と関係がなく,一過性に上昇し,その後低下した。
  • 森 直樹, 大隅 一興, 村上 修一, 和気 敦, 中田 浩一, 三砂 將裕, 織田 進, 江藤 澄哉
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1158-1165
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    RIAを用いて25例の成人T細胞白血病(ATL), 68例の他の血液疾患および13例のHTLV-Iキャリアにおける尿中副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTH-rP)排泄を検討した。高Ca血症(+) ATLにおける尿中PTH-rP活性の平均値は11.01 μg/g·Crであり,血清Ca値正常ATLの5.16に比べ,高値であった。急性型,リンパ腫型および急性転化型ではそれぞれ8.84, 4.18, 18.20と健常者尿中PTH-rP活性と比較し,いずれも高値であったが,キャリア,慢性型およびくすぶり型では全例,正常範囲内であった。7例の急性骨髄性白血病,1例の慢性骨髄性白血病急性転化および3例の悪性リンパ腫症例に高値例を認めた。尿中PTH-rP活性は高Ca血症(+) ATL症例においては血清Ca値との間に,ATL全例においては血清LDH値との間に相関を認めた。以上より,ATLにおいては尿中PTH-rPは臨床検査として有用であることが示唆され,さらにATL以外の造血器腫瘍細胞からのPTH-rP産生も示唆された。
  • —血栓症発症前の凝血学的分子マーカーの動態—
    猪本 享司, 高本 雅弘, 堀内 宣昭, 佐藤 幸一, 藤野 修, 岡 耕一, 友成 章, 宇野 由佳, 重清 俊雄
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1166-1171
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    先天性アンチトロンビンIII (AT III)欠乏症妊婦に,妊娠中・後期はワーファリン投与,その他の時期はAT III濃縮製剤の投与を行った。患者は下肢血栓症を発症したが,フィブリノペプチドA (FPA), トロンビン・AT III複合体(TAT)値はその1週間前に既に高値を示しており,血栓症予知のマーカーとしての可能性が示唆された。血栓症はAT III濃縮製剤の投与にて改善した。したがって週1∼2回FPA, TATを測定し,高値の場合にはAT III濃縮製剤の投与が必要と思われた。またワーファリンは,催奇性を避けるために妊娠6∼9週の間は投与しないこと,投与中は胎児の中枢神経異常を避けるために頻回に血液凝固能検査を行い,過剰投与に対する注意が必要と思われた。母児ともに異常無く出産し,臍帯血のAT III活性は18%であった。一般に新生児期にAT III活性のみによりAT III欠乏症と診断するのは困難であるが,今回われわれは,臍帯血を用いてAT III遺伝子の制限酵素断片の多型性を解析し,新生児期に患児と診断し得た。
  • 古家 寛司, 石橋 里江子, 若山 聡雄, 大國 智司, 野津 和巳, 高木 千恵子, 加藤 譲
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1172-1177
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    リコンビナントヒトIL-1β (IL-1β)を骨髄異形成症候群(MDS) 2例,再生不良性貧血(AA) 2例の計4例の患者に皮下投与した。IL-1βの投与量は1日1万から3万単位,期間は14日から72日間であった。全例において末梢血顆粒球と骨髄中の単球の割合が増加した。2例の患者(MDS, AA各1例)において明らかな血小板増加が認められた。これらの患者の骨髄では巨核球や単球の増加が認められたが,骨髄中の芽球は増加しなかった。IL-1β投与後血小板が増加したMDSの1例では血清GM-CSF, TNF-βの増加を認めたが,IL-6は変化しなかった。IL-1βは血小板減少を伴うMDSやAA患者の少なくとも一部の治療に有用と考えられる。
  • 倉田 義之, 宮川 幸子, 小杉 智, 柏木 浩和, 本田 繁則, 水谷 肇, 冨山 佳昭, 金山 良男, 松沢 佑次
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1178-1182
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者血清中にしばしば検出される抗核抗体(ANA)の臨床的意義につき検討した。対象は,当院で既に平均5.5年経過観察中のITP 55例である。ANA陽性を23例に認めた。ANA陽性例の過半数の症例で抗体価は320倍以上と高値であった。ANAの陽性,陰性あるいはANA抗体価と血小板数間には関連を認めなかった。ANA陽性23例中10例に沈降性抗ENA抗体を認めた。抗SS-A抗体陽性例が7例,抗nuclear RNP抗体陽性例が3例であった。抗SS-A抗体を認めた7症例の血小板数は抗SS-A抗体陰性症例の血小板数に比べ低値の傾向を示した。これら抗SS-Aまたは抗nuclear RNP沈降抗体を認めた10例は平均8.1年間経過観察しているが未だSLEを発症していない。これらの事実はANA抗体価高値ITP症例あるいは抗SS-A抗体陽性ITP症例は経過中に必ずしもSLEを発症するとは限らない事を意味するとともにこれらのマーカーでもってSLEを発症し易いハイリスク群を予見することは困難であると思われた。
  • 小林 敏貴, 長澤 俊郎, 阿部 帥, 森 尚義
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1183-1190
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    9例のKi-1リンパ腫について,形態学的,免疫組織化学的所見を検討した。リンパ節浸潤7例,皮膚浸潤6例,両者に浸潤をみた症例は4例,骨髄浸潤は2例認めた。大型の腫瘍細胞はリンパ節では傍皮質領域を中心にシート状,遊離状の増殖を示し,周縁洞,髄洞にも浸潤していた。皮膚では皮下腫瘤の形態をとり,さらに真皮層を中心に散在性に増殖していた。免疫染色ではBer-H2, Ki-1, HLA-DRがすべての症例で陽性で,9例中8例がTリンパ球様表面形質を示した。しかし末梢性T細胞リンパ腫11例すべてにおいて陽性のLeu-4, βF1は,それぞれ9例中2例にのみ陽性であった。本研究の腫瘍細胞は,陽性Tリンパ球特異抗体が少数で,Leu-4, βF1陽性のものも少なく,Tリンパ球系とするには疑問が残った。本研究の結果からは,明らかなTリンパ球系Ki-1リンパ腫はそれほど多くない可能性が考えられた。
  • 森岡 正信
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1191-1198
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    白血病をはじめとする血液疾患における血清筋型アルドラーゼ(ALD-A)をradioimmunoassay法により測定した。健常人の血清ALD-A値は171±39 ng/ml (±2SD)であり,210 ng/ml以下を正常値とした。急性白血病61例の血清ALD-A値は480±319 ng/ml (125-1, 550)であり,52例(85.2%)が異常値を示した。病型別にみるとANLL 35例中28例(80%), ALL 26例中24例(92.3%)が異常値を示した。完全寛解時には全例正常値に復し,病勢と並行した推移を示した。未治療時の血清ALD-A値と寛解率および生存期間には有意の相関がみられた。慢性骨髄性白血病(慢性期)24例の検討では481±177 ng/ml (270-1, 100)であり,全例が異常値を示した。これらは,治療による白血球数の減少に伴い低下した。一方,溶血性貧血を除く鉄欠乏性貧血,再生不良性貧血,特発性血小板減少性紫斑病などの非腫瘍性血液疾患では健常人と同様に210 ng/ml以下の正常値を示した。RIA法による血清ALD-Aは白血病の補助診断や病勢判定に有用であることが示唆された。
  • 北島 晴夫, 金子 隆, 赤塚 順一
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1199-1203
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    小児期血液疾患を中心に,赤血球亜鉛プロトポルフィリン/ヘム比(ZPP)を測定した。疾患児201名の検討では,ZPPは鉄欠乏診断パラメータとして敏感度,特異度ともに優れていた。疾患児と健康児における,その有用性には差があるように思われた。鉄欠乏性貧血診断時のZPPは全例(26名),200μmol/mol heme以上の高値であったが,鉄剤治療により低下傾向をとり,その正常化にはおよそ3∼4カ月を要した。潜在性鉄欠乏症5例のうち1例を除いて,ZPPは正常であった。その他の疾患におけるZPPの検討では,鉛中毒,溶血性貧血,再生不良性貧血,急性白血病初発時,寛解導入時,などで高値を示した。鉄欠乏症を除外し,ヘマトクリット補正後のZPPによる検討でも傾向は同様で,各種貧血の中に,ferrochelatase活性が低下する病態が潜むことが推測された。
  • 岡本 康裕, 高上 洋一, 斎藤 慎一, 平尾 敦, 鈴江 毅, 清水 隆史, 阿部 孝典, 佐藤 純子, 渡辺 力, 河野 嘉文, 二宮 ...
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1204-1209
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    自家末梢血幹細胞移植術(PBSCT)を施行した小児白血病・悪性リンパ腫(NHL)患者32名について,varicella-zoster virus感染症(VZV)の発生を検討した。移植前療法には,全身放射線照射(TBI)を用いず,超大量化学療法のみを行った。移植後16∼371日(平均112.1日)に,皮膚限局性のVZVが32名中14例(43.8%)に発症した。このうち12名にはacyclovirの単独静脈内投与を行い,2名には水痘高力価γ-globulin製剤の静脈内投与も併用した結果,全例治癒し,再燃や死亡例はなかった。VZV発症の危険因子の検討では,VZVの既往のある群がない群より高頻度にVZVを発症した(P=0.008)。またVZV発症群と非発症群との比較検討では,発症群の無病気生存率が非発症群に比べて有意に高かった(P<0.05)。TBIを用いないPBSCT施行後にも,VZVは高頻度に発生するものの重症例は少なく,またVZVがPBSCT後の白血病・NHL再発を防止する可能性が推察された。
症例
  • 和田 英夫, 横山 尚正, 大岩 道明, 兼児 敏浩, 谷川 元明, 玉木 茂久, 塚田 哲也, 影山 慎一, 小林 透, 南 信行, 出口 ...
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1210-1214
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    当科における,妊娠に合併した特発性血小板減少性紫斑病(ITP)14例(のべ18例)について検討した。その内訳は,妊娠による再発4例,初発10例,ITP経過中に妊娠したもの4例であった。新生児の状態は,14例が正常児であり,死産3例,未熟児1例が認められ,妊娠中毒症は6例に見られた。また,胎児の一過性血小板減少は14例中4例に認められ,全例で母親の血小板数は4.0×104l以下であった。自己抗体に関しては,抗核抗体,クームステスト陽性,抗リン脂質抗体陽性例が一部見られたが,病態とは著しい相関は見られなかった。治療では,7例が無治療であったが,11例にグルココルチコイド,γグロブリン大量投与,血小板輸血が行われた。妊娠にITPを合併する頻度は高く,ITPの合併は妊娠の維持ならびに分娩に対するリスクファクターとなりうることから,厳重な管理が必要であると考えられた。
  • 魚住 公治, 牧野 虎彦, 下高原 茂巳, 石橋 和明, 宇都宮 與, 花田 修一, 有馬 暉勝
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1215-1220
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    ITPの病像で発症し,摘脾術の約1年後から3∼4週の周期で血小板数の変動を示し始めた周期性血小板減少症に,慢性甲状腺炎と強直性脊椎炎を合併した58歳の男性例を報告した。T3 0.48ng/ml, T4 2.1μg/ml, TSH257.1μU/mlと甲状腺機能低下を示し,サイロイドテスト,マイクロゾームテストはいずれも6,400倍と陽性,抗核抗体は陰性であった。脊椎のX線写真は典型的なbamboo spineを示し,HLA B27は陽性であった。ITPに対し,パルス療法を含む副腎皮質ステロイド剤,γグロブリン大量療法,ダナゾール,vinca alkaloid緩速点滴静注,摘脾術などを行ったが効果は一過性であった。この後,血小板数が0.4∼34.4×1010/Lと変動し始めたため周期性血小板減少症と診断した。メソトレキセートが有効で,周期性の変動が消失したことを含め,周期性血小板減少症の発症機序を考える上で,示唆にとむ症例と思われた。
  • 金蔵 章子, 嶽崎 俊郎, 川上 清
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1221-1225
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    白質脳症を伴った急性リンパ性白血病(ALL)の患児に高気圧酸素療法(OHP)を施行し,著明な臨床症状の改善が得られたので報告した。症例は6歳の女児で,1年9カ月前にALLと診断され,化学療法を続けていた。初回中枢神経(CNS)再発後MTX髄注,放射線療法にてCNS寛解となるも,2回目のCNS再発のため入院。メソトレキセートを1週間に1回の頻度で髄注した後より,意識障害,手指の振戦が認められた。意識障害は2週間続き,頭部のmagnetic resonance imaging (MRI)検査で,白質にび慢性に強信号領域が見られ,器質的変化が疑われた。患児にOHPを施行したところ,3日目より改善が認められ,10日後には神経症状は完全に回復した。白質脳症の治療にOHPを用いた試みはこれまで報告がなく,今後白質脳症に対する初期治療として本療法は試みる価値があると考えられた。
  • 長藤 宏司, 岩切 龍一, 宮本 敏浩, 岡村 秀樹, 横田 英介, 松本 勲
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1226-1230
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は58歳の男性で,発熱を主訴として1988年7月入院。入院時,脾腫はなく,末梢血で白血球数の増加と幼若顆粒球の出現,好中球アルカリフォスファターゼ活性低下,骨髄過形成特に顆粒球系過形成,骨髄の染色体分析では46, XY, t(9;22)(q34;11)の核型100%等より慢性骨髄性白血病(CML)と診断された。インターフェロンにより良好な血液学的コントロールが可能であった。Ph1クローンの減少は見られなかった。1990年3月にCD10陽性のリンパ芽球性急性転化を起こし,染色体分析で,45, X, -Y, t(9;22)(q34;q11), +1, -8と付加的異常をみとめた。5月1日よりvincristine 0.6 mg×4日,pirarubicin 15 mg×4日,dexamethasone 40 mg×4日を投与したところ,寛解が得られた。10月2日の染色体分析は,正常核型とPh1のモザイク,12月14日の染色体分析は正常核型のみとなり,骨髄細胞のM-bcr再構成も認められなかった。CMLの急性転化後に化学療法によりPh1クローンの消失した報告はなく,まれな症例と思われた。
  • 高井 和江, 真田 雅好, 渋谷 宏行
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1231-1236
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    53歳男性。1988年1月IgM-κ monoclonal gammopathyに伴う末梢神経障害と診断され,plasmapheresis, chlorambucil, MP療法施行。神経症状は改善したが,89年2月高度の溶血性貧血が出現,抗Pr2特異性を有するlow-titer寒冷凝集素症(IgM-κ)と診断した。ステロイド大量療法に不応性となり,90年1月発熱,肝脾腫,高度の汎血球減少とともに骨髄に腫瘍細胞(cytoplasmic μ, κ陽性)を認めた。悪性リンパ腫への進展として化学療法を開始したが,肺炎と消化管出血にて死亡した。剖検では全身リンパ節,諸臓器にびまん性大細胞型リンパ腫(B-cell type)の浸潤を認めた。また骨髄,肝,脾,リンパ節に高度の赤血球貪食性組織球の増加を認め,hemophagocytic syndrome様病像を呈した。高度の溶血性貧血の成因として,寒冷凝集素の反応温度域が高いこととともに,悪性リンパ腫への進展に伴う組織球活性化機序が示唆された。
  • 東野 克巳, 木藤 克之, 程原 佳子, 藤山 佳秀, 馬場 忠雄, 細田 四郎
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1237-1241
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例32歳女性。前胸部,四肢に点状出血を認め近医受診。汎血球減少を指摘され当科入院。入院時検査成績:RBC: 247×104l, Hb: 8.8g/dl, Plts: 13,000/μl, WBC: 2,500/μl。骨髄穿刺,生検にて再生不良性貧血と診断。methylprednisolone pulse療法,mepitiostene, 抗リンパ球グロブリン(ALG)療法はいずれも無効であった。内服をoxymetholoneに変更するとともに,erythropoietin製剤およびrhG-CSFの投与を行ったところ,投与約5週後より赤血球,血小板が増加しはじめ,出血症状の改善を得た。投与12週後には,Hb: 11.4g/dl, Plts: 49,000/μlとなり,erythropoietin, rhG-CSFの投与を終了し退院。以後oxymetholoneのみで経過観察していたが退院4週後Plts: 12,000/μlと低下した。erythropoietinおよびrhG-CSFの併用投与は有効であったと考えられ,本療法の再生不良性貧血に対する有効性が示唆された。
  • 野村 昌作, 越川 佳代子, 濱本 健次郎, 大久保 進, 安永 幸二郎
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1242-1247
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は,発熱・咳・頭痛を主訴に入院した21歳女性。臨床所見としては,肝脾腫・貧血・白血球減少および肝機能障害が認められた。以前に,全身性エリテマトーデス(SLE)の診断を受けていたので,当初SLEの増悪期を疑った。しかし,入院時の検査で,EBウィルスを含む数種類のウィルスの抗体価の上昇があり,また骨髄所見で,マクロファージによる血球貪食像が観察されたことから,Virus-associated hemophagocytic syndrome (VAHS)と診断した。まず,プレドニソロンの投与を行ったが,反応は認められなかった。そこで次に,γ-グロブリンの投与を行ったところ,臨床症状の著明な改善が見られた。本例は,ステロイドとγ-グロブリンの併用が有効であったことから,成人例のVAHSには,本治療法を試みる価値があるものと思われる。
  • 高木 省治郎
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1248-1251
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    66歳の女性が高熱と意識障害のため入院した。患者は約1年間にわたり不明熱が頻発していた。入院時末梢血の単球増加と血小板減少および骨髄細胞の異形成は慢性骨髄単球性白血病を強く疑わせた。抗生物質の投与にもかかわらず高熱は持続した。メチルプレドニソロンのパルス療法を施行したが,意識障害,呼吸困難,発熱などの臨床症状は改善せず,さらに胸水や腹水が出現しだした。エピルビシン,サイクロフォスファマイド,ビンクリスチン,プレドニソロンよりなるF-COP療法を施行したところ,臨床症状の劇的な改善をみた。その後,7カ月にわたりF-COP療法を毎月施行し病状の悪化を認めなかった。本例はF-COP療法がCMMoLの患者に有効である可能性を強く示唆している。
  • 新井 望, 原 明博, 梅田 正法, 白井 達男
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1252-1256
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳男性。18カ月続く発熱の精査目的にて1990年4月30日当院入院となった。入院時表在リンパ節および肝脾触知せず,白血球数増加と貧血を認めたため,骨髄穿刺および生検を施行した。その結果,骨髄生検像にて非特異性肉芽腫像を認め,5月10日頃より肝脾腫および左頸部リンパ節腫脹が出現したためリンパ節生検施行。Hodgkin病と診断し,5月20日よりCHOP療法を施行するも間質性肺炎を併発し7月3日永眠す。本症例は,不明熱で発症し骨髄生検にて組織球を中心とした肉芽腫を認め,その後にリンパ節が腫脹し生検にてHodgkin病と診断された症例である。悪性リンパ腫は,骨髄,肝,脾などに肉芽腫形成を認めることがあるが,ほとんどが進行例である。しかし本症例のようにリンパ節腫脹,肝脾腫などを認めないうちから骨髄に肉芽腫を形成する症例もあるため注意が必要と思われた。
  • 高橋 直人, 中鉢 明彦, 渡辺 慎太郎, 西成 民夫, 仁村 隆, 今井 裕一, 福島 幸隆, 三浦 亮
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1257-1262
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    42歳男性。1988年,Ph陽性慢性骨髄性白血病(CML)慢性期と診断されラニムスチン,インターフェロンαにより治療を継続。1990年4月,下肢に紫斑が出現し入院。末梢血は白血球319,200/μl(芽球12%),Hb 9.2g/dl,血小板48,000/μl。骨髄は過形成で骨髄芽球が68.2%を占めていた。染色体検査では48, XY, +8, double Phであった。急性転化と診断しVDS-CP療法施行したが,第4病日より頭痛,眼振が出現し,頭部CTにて小脳虫部に高吸収域を認めた。BHAC-DMP療法により一時的に神経症状の軽快と小脳病変の縮小を認めた。9月に再度頭痛,眼振が出現し,CTで小脳腫瘤の増大が認められたため局所照射療法を併用したところCT上腫瘤の著明な縮小がみられた。しかし血液学的には徐々に化学療法抵抗性となり,11月22日脳出血にて死亡した。剖検にて小脳虫部に線維化とヘモジデリンを貪食した多数のマクロファージが認められた。CMLの脳内腫瘤形成例につき文献的に検討し,本例での生存期間の延長に寄与した要因について考察した。
  • 張 高明, 若林 昌哉, 林 直樹, 荒川 正昭
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1263-1267
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は43歳,男性。精神分裂病にて某病院に入院中,白血球増多を認め,精査の結果,CML慢性期と診断された。hydroxyureaによる治療が無効で,芽球の急激な増加および染色体分析でPh1以外の付加的異常が認められたため,急性転化と診断した。芽球はmyeloid (CD 13, 33), lymphoid (CD 10, 19)共に陽性のbiphenotypeであった。VP療法が一時的に有効であったが,再び芽球の増加を認めたため,Ara-C少量療法をVP療法に併用したところ,末梢血中の成熟好中球の増加および貧血,血小板数の著明な改善がみられた。骨髄でも有核細胞数17.4×104l, 芽球が5%と減少し,成熟好中球が増加した。CMLの急性転化症例におけるAra-C少量療法の有効性の報告は少ないが,急性転化時の第一選択であるVP療法と殺細胞作用と分化誘導作用の両面を合わせもつAra-C少量療法の併用によって,血液学的改善が得られた。本併用療法は,CML急性転化時に試みるに値する治療法であると考えられた。
  • 新井 望, 梅田 正法, 白井 達男
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1268-1272
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    46歳,男性。平成3年5月右扁桃腺腫大を指摘され,生検の結果悪性リンパ腫(瀰漫性大細胞型)と診断された。入院時肝機能は正常であったが,HB抗原抗体系の検索からHBの無症候性キャリアと診断された。Ann Arbor分類にてII期Aと診断,6月8日よりCOP-BLAM療法を開始した。7月2日よりGOT 286 IU/l GPT 392 IU/lと上昇し,DNAポリメラーゼ9462cpmまで上昇したため7月10日よりIFN-α 600万単位連日筋注を開始した。9月2日にはDNAポリメラーゼは0となり,9月17日にはHBeAbが陽性となりseroconversionを示した。9月4日よりprednisoloneを除いたCO-BLAM療法を施行し,完全寛解となり9月25日退院した。悪性リンパ腫の経過中B型肝炎無症候性キャリアの症例で化学療法中劇症化する例が多く認められている。そのため肝機能障害悪化例およびDNAポリメラーゼ上昇例は早期にIFNを使用しseroconversionをさせてから化学療法を継続する必要があると思われた。
  • 鈴木 隆史, 高橋 陽子, 吉田 信一, 山岸 哲也, 立山 雅己, 田中 朝志, 腰原 公人, 松本 顕治, 福江 英尚, 依藤 寿, 福 ...
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1273-1278
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    後天性免疫不全症候群(AIDS)の主要な日和見感染症であるニューモシスチス・カリニ肺炎(Pneumocystis carinii pneumonia; PCP)には,ST合剤,ペンタミジンなどの治療薬が使用されている。しかし,これら薬剤には骨髄抑制などの強い副作用があり,治療の継続が困難となる場合も多い。今回,ペンタミジンによるPCP治療中に急性膵炎さらにDICを発症した14歳のHIV陽性小児血友病A症例を経験し,蛋白分解酵素阻害剤や抗凝固療法などの治療により改善し得た。膵炎がDICの基礎疾患と考えられ,ペンタミジン使用に際しては膵逸脱酵素などの十分な経過観察が必要だと思われた。また本症例に経過を通して認められた骨髄抑制に対するG-CSFおよびEPOの投与は新たな二次感染を予防し,治療を継続維持するうえで欠くことのできない重要な補助療法であると考えられた。
  • —本邦報告例の臨床病理学的検討—
    小林 裕, 魚嶋 伸彦, 柱本 圭子, 田中 耕治, 木村 晋也, 和田 勝也, 小沢 勝, 丸尾 直幸, 近藤 元治, 南川 哲寛, 伏木 ...
    1992 年 33 巻 9 号 p. 1279-1284
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    患者は76歳女性。1987年7月より発熱を認め,不明熱として10月15日当科入院となる。入院時現症は体温38.6°Cで眼瞼結膜貧血様,左上肢の弛緩性麻痺を認めた。入院時検査はESR56 mm/hr,CRP5+,LDH上昇,Hb 7.9g/dlで,発熱の原因を検索するも不明。抗生剤,抗真菌剤,抗結核剤,methyl-PSLパルス療法に反応せず,10月下旬よりDIC併発し11月5日死亡。剖検では,肉眼的に脾,副腎腫大を認めた。組織学的に脳,肝,脾,腎,心,肺,副腎,子宮の血管内に腫瘍細胞を認めneoplastic angioendotheliosis (NAE),免疫組織学的にB lymphomaと診断。NAEとして報告された本邦症例,37例を集計し検討した。年齢は37∼87歳で中央値60歳。男性19, 女性18。経過中に出現した症状は精神神経症状,発熱が多く,皮疹を呈する症例は少なかった。検査では非特異的所見のみで確定診断には生検が不可欠であり,剖検での病変出現頻度などから,症状の有無にかかわらず腎,肺あるいは皮膚の生検を考慮すべきと思われた。
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