臨床血液
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症例
Retinoic acid syndromeを発症したと考えられる急性前骨髄球性白血病の2例
堀越 昶澤田 滋正相磯 ますみ河村 雅明飯塚 芳一竹内 仁大島 年照堀江 孝至直江 知樹大野 竜三
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1993 年 34 巻 9 号 p. 1044-1049

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抄録

All-trans retinoic acid (ATRA)使用中,発熱,胸痛,呼吸困難を訴え,胸水貯留および肺野の浸潤影を示した急性前骨髄球性白血病(APL)の2例を報告した。症例1は50歳女性再発例で,結核性胸膜炎と診断され,抗結核薬投与後軽快したが,症状の消失が遅れた。症例2は,46歳男性初発例で,ARDSと診断され,症状発現後早期にプレドニゾロンを使用し,症状は急速に改善した。症例1はATRA使用後53日,症例2は38日目に完全寛解となった。retrospectiveにみて,本2例はいわゆる「retinoic acid syndrome (RAS)」を発症した本邦初例と考えられた。自験5例の比較では,RAS発症例は白血球が増加し,DICを伴ったものに認められたが,10万以上の芽球増加を示した症例では発症しておらず,leukocytosisがその直接の原因ではなさそうである。今後ATRA使用例は増加すると思われ,その際,重篤な呼吸器症状を呈するRASの発生を念頭に置き,発症時はステロイド投与を躊躇しないことが必要である。

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© 1993 一般社団法人 日本血液学会
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