1996 年 37 巻 11 号 p. 1283-1288
症例は38歳,女性。平成4年4月汎血球減少症の精査のため当科に入院となった。骨髄生検等の検査により再生不良性貧血(AA)と診断された。メチルプレドニゾロンパルス療法施行後,シクロスポリン投与にて外来通院加療を受けていた。中等度の効果がえられたが,シクロスポリンの漸減とともに汎血球減少が増悪した。平成6年6月より蛋白同化ステロイド剤の投与を開始したところ,徐々に末梢血球数の改善が認められた。平成7年6月,突然左下肢の腫脹と変色を認め,ドップラーエコーにて左大腿静脈血栓症と診断された。患者はループスアンチコアグラント陽性,抗カルジオリピンIgG抗体陽性であり,抗リン脂質抗体症候群(APS)と診断された。これまでAPSを合併したAAの報告例はなく,AAにおける血栓症の成因を知る上で貴重な症例と考えられた。