臨床血液
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症例
骨髄線維症を合併したIgD (λ)型多発性骨髄腫:ある核物理学者の場合
加納 正大熊 稔
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1996 年 37 巻 3 号 p. 244-248

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抄録

骨髄線維症を合併したIgD (λ)型多発性骨髄腫(MM)例を経験した。[症例]66歳,男性。核物理学者。大学卒業後数年間,放射線防禦設備のないところで核物理学の研究を行い,その後も長年にわたりこの方面の研究に従事した。1992年MMの診断当初より骨髄穿刺は困難であった。各種の化学療法を試みるも寛解期間は短く,十分な効果をあげられなかった。1995年胸骨,腸骨ともにdry tapで,腸骨生検にて骨髄線維症の合併を確認した。骨髄線維化は巣状にみられ,腫瘍細胞の分布と関連する。汎血球減少症は高度であるが,髄外造血像はみられない。骨髄線維症を合併したIgD型MMの既報告4例(すべてλ型)と同じく,本症例に合併した骨髄線維症は続発性と考えられる。さらに本症例の場合,MMと放射線の関係が注目される。X線を扱った寺田寅彦氏(1878∼1935, 物理学者,随筆家)の死に至る骨痛もMMによるものではないか。今後の諸家の検討を期待したい。

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© 1996 一般社団法人 日本血液学会
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