臨床血液
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症例
胸水を伴った伝染性単核球症
高倉 康人小林 裕高橋 由布子近山 達池田 元美魚嶋 伸彦木村 晋也田中 耕治和田 勝也小沢 勝北住 清治近藤 元治
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1996 年 37 巻 8 号 p. 719-724

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抄録

症例は24歳の男性。発熱と咽頭痛を主訴に近医受診。肝脾腫,黄疸,体幹の紅斑,血清,LDH, GOT, GPT, 総ビリルビン値の上昇,両側胸水も認めた。肝脾腫,黄疸等は改善したが胸水は消失せず精査のため当院入院。EB-VCA-IgM, VCA-IgGが高値,EBNA陰性であり,伝染性単核球症と診断。胸水は浸出性で単核球優位に細胞数が増加していた。細菌学的検査では陽性所見得られず,細胞診,染色体検査,遺伝子解析でも腫瘍性の増殖は認めなかった。胸水中のリンパ球は表面マーカー上T細胞優位に増加しており,胸膜生検でも血管周囲に免疫染色上T細胞優位な単核球浸潤の所見を認め,胸水の成因としてT細胞の浸潤による胸膜炎が考えられた。胸水は自然経過にて約1カ月で消失した。伝染性単核球症による胸水の報告は過去40年で20例と希であり,ここに報告した。

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© 1996 一般社団法人 日本血液学会
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