臨床血液
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症例
全気道系の多発性髄外性形質細胞腫
加納 正網谷 良一
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ジャーナル 認証あり

1997 年 38 巻 3 号 p. 217-221

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抄録

上気道から下気道に至る全気道系に多発した髄外性形質細胞腫例を経験した。きわめて稀な症例と考えられるが,形質細胞系腫瘍の分布,あるいは進展に関して示唆に富む症例と考え報告した。[症例]1941年生,男性。1991年肺炎に罹患した際に,肺形質細胞腫が偶然発見された。その後の精査により,上気道から下気道・肺に至るまで,腫瘤,出血を伴う結節性病変などを多数認めた。上気道と肺の病変部の生検では形質細胞腫を確認したが,気管・気管支の病変部の生検は出血の危険を考慮して行われていない。しかし,化学療法を中断した際には,結節性病変の増大と増加を認めた。また,腰椎の魚椎化と骨髄中形質細胞の増生が確認された。専ら気道系にみられた多発性髄外性形質細胞腫の発生機序として,気管内転移あるいは多中心性の発生を推定した。また,本症例にみられた限局性の骨髄腫病変は髄外性形質細胞腫からの転移性病変と想定した。なお,診断後5年以上を経過したが,日常生活ではほとんど支障はない。

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© 1997 一般社団法人 日本血液学会
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