臨床血液
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症例
All-trans retinoic acid療法中に陰嚢部Fournier's gangreneを来し外耳道腫瘤を伴って再発した急性前骨髄球性白血病
後藤 英子鶴見 寿笠原 千嗣原 武志山田 俊樹澤田 道夫棚橋 忍亀谷 正明森脇 久隆
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1998 年 39 巻 12 号 p. 1169-1174

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抄録

症例は43歳,男性。歯肉出血を主訴に来院。APLと診断後,ATRA併用化学療法を施行した。骨髄抑制期に陰嚢部Fournier's gangreneを併発するも完全寛解が得られた。完全寛解導入から7カ月後,両側外耳道に小腫瘤を認め,APLの髄外腫瘤と診断した。骨髄にも前骨髄球の増生を認め再発と診断,再度ATRA併用化学療法にて2回目の寛解を得た。その5カ月後,骨髄は寛解状態であるにもかかわらず,再度外耳道腫瘤を認め,放射線治療にて縮小を得たが,その後に骨髄再発,引き続き左前頭葉にも腫瘤が出現,脳出血を来し死亡した。病理解剖で,左前頭葉腫瘤はAPLの髄外腫瘤と判明した。APLではATRA療法後に皮膚再発が多いことが注目されているが,本例は,ATRA療法中に陰嚢部の皮膚潰瘍とFournier's gangreneを併発,さらに外耳道腫瘤を伴って再発し,末期には脳内腫瘤も形成した興味ある1例と考えられた。

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© 1998 一般社団法人 日本血液学会
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