臨床血液
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症例
All-trans Retinoic Acidを併用し寛解導入後,多発性の脳内腫瘤を形成して再発した急性前骨髄球性白血病
前田 彰男小林 幸夫斎藤 健砥谷 和人川東 靖子田野崎 隆二高上 洋一竹中 武昭岩田 暢子飛内 賢正
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1999 年 40 巻 10 号 p. 1081-1086

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抄録

22歳,女性,発熱と出血傾向あり,白血球数106,000/μl(APL細胞90%),Hgb 11.6 g/dl, 血小板1.6万/μlにて急性前骨髄球性白血病(以下,APL)と診断された。APLとしてall-trans retinoic acid(以下,ATRA),enocitabine, daunorubicinによる寛解導入後,ATRAを中止し,地固め療法を施行した。この間,骨髄はRT-PCRでPML-RARα融合遺伝子(-)。発症後4カ月目に脳脊髄液にAPL細胞の出現を認め,抗癌剤の髄腔内注入にて髄液所見は一時,改善した。しかし,さらに2カ月後,脳脊髄液にAPL細胞が再出現し,脳MRI上,多発性腫瘤を認めた。再度の髄腔内注入,ATRA再開にて,髄液所見,脳内腫瘤は消失した。APLの中枢神経浸潤は稀であったが,ATRAが使用されるようになり,その報告が散見される。本例は,中枢神経系のみの再発を繰り返す特異な経過を示し,ATRAの内服が中枢神経系に対し有効と考えられたので報告する。

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© 1999 一般社団法人 日本血液学会
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