臨床血液
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40 巻, 10 号
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臨床研究
  • —多施設共同研究—
    河野 文夫, 清川 哲志, 品川 克至, 竹中 克斗, 今城 健二, 林 真, 広田 雄一, 大野 裕樹, 津田 弘之, 権藤 久司, 渋谷 ...
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1051-1057
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    成人AML第1寛解期における,自己末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を用いた超大量化学療法の有効性,安全性を評価するために,多施設共同研究(PBSCT研究会造血器腫瘍分科会)による前期第II相試験を行った。登録された105例中,56例にauto-PBSCTが施行され,症例の中央値は44歳であった。FAB分類ではM2, M3が6割を占めた。採取されたCD34陽性細胞の中央値は2.3×106/kgで,末梢血の顆粒球が500/μl, 血小板が20,000/μlをこえるまでに要した日数の中央値はそれぞれ14, 16日であった。またauto-PBSCT施行例のDFSは,観察期間中央値534日で62%であった。今回の研究は症例が少なく,観察期間もまだ十分ではないが,AMLに対する寛解後療法として,auto-PBSCTを用いた大量化学療法が安全に実行可能であり,有効なことが示唆された。今後は,AML治療戦略の中で,寛解後療法として,本療法が有効であるかどうかを明らかにするため,標準的化学療法との前方視的無作為化臨床試験が必要と思われる。
  • —臨床前期第II相試験—
    張 高明, 石黒 卓朗, 今城 健二, 河野 文夫, 権藤 久司, 笠井 正晴, 増田 道彦, 小池 満, 島崎 千尋, 原 雅道, 品川 ...
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1058-1067
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    中等度悪性非Hodgkinリンパ腫(IG-NHL)を対象として,CHOP療法による寛解導入後の自己末梢血幹細胞移植併用大量化学療法(auto-PBSCT併用HD-CT)の臨床前期第II相試験を多施設共同研究によって実施した。PBSCはcyclophosphamideまたはetoposide大量にG-CSFを併用して動員・採取し,生着に十分な量のCD34陽性細胞(>1×106/kg)が採取可能であった。登録症例81例中,50例でauto-PBSCT併用HD-CTが実施され,移植後の造血回復は迅速であった。Bearmanの治療毒性基準でgrade III/IVの非血液毒性が約6%に発生し,治療関連死が6% (3/50)に見られた。CRでHD-CTを実施した群(38例,年齢中央値52歳)においては,通常化学療法継続群に比して高い無病生存率が観察され(57%対35%),HD-CTの寛解後療法としての有効性が示唆された。IG-NHLに対するauto-PBSCT併用HD-CTは比較的安全に実行可能と考えられるが,HD-CTの厳密な有効性評価のためには前方視的無作為化による臨床第III相試験が必要である。
  • —長期的効果と安全性,作用機序についての考察—
    平澤 晃, 佐藤 忠嗣, 川淵 靖司, 西川 哲男, 千葉 省三, 若林 芳久
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1068-1074
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    副腎皮質ステロイド剤抵抗性の慢性型特発性血小板減少性紫斑病(ITP) 8症例に,従来本邦では抗らい薬として用いられてきたDiaminodiphenyl sulfone (DDS) 75∼150 mg/日を経口的に投与し,その効果と安全性について検討した。5症例(62.5%)で,投与開始から35∼64日で血小板数は10×104lを越えた。うち3例では長期的(3, 4, 6年間)に血小板数10×104l以上を維持している。その作用は用量依存的で,また可逆的な傾向があった。副作用として,3症例で皮膚の掻痒感,発赤がみられたが,一時的な休薬や抗ヒスタミン剤などで改善し,重篤なものはみられなかった。作用機序として,血小板の増加時に網状赤血球比率の増加も観察され,軽度の溶血を介した脾での血小板貪食抑制が考えられたが,まだ不明な点が多い。結論としてDDSは,出血傾向が続く難治性ITP症例に有用な治療法と考えられた。
症例
  • 岡村 篤夫, 松井 利充, 山口 彰則, 清水 伸一, 門脇 誠三, 千原 和夫, 藤本 剛生, 神吉 香織, 藤尾 一義
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1074-1080
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は,出血性胃潰瘍にて入院となった,71歳男性。貧血に対し輸血が必要と考えられたが,原因不明の不規則抗体が検出された。そこで第2病日骨髄穿刺を施行したところ,顆粒球系・巨核球系細胞に異常を認めなかったが,多核を有する異常巨赤芽球の過形成を認めた。第14病日再度骨髄穿刺を施行したところ,多核の巨赤芽球は消失し,2核を有するあるいは核橋によるつながりを持った2細胞1組の赤芽球を多く認め,同時に不規則抗体は消失した。赤芽球の電顕像では,細胞膜および核膜の異常を同時に認めたことから,自験例はCongenital Dyserythropoietic AnemiaのI型およびII型両方の形態学的特徴を有した,高齢者のDyserythropoietic Anemiaであると考えられた。これら赤芽球の形態変化および不規則抗体の出現には,出血によるエリスロポエチンの反応性分泌が関与したと考えられた。
  • 前田 彰男, 小林 幸夫, 斎藤 健, 砥谷 和人, 川東 靖子, 田野崎 隆二, 高上 洋一, 竹中 武昭, 岩田 暢子, 飛内 賢正
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1081-1086
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    22歳,女性,発熱と出血傾向あり,白血球数106,000/μl(APL細胞90%),Hgb 11.6 g/dl, 血小板1.6万/μlにて急性前骨髄球性白血病(以下,APL)と診断された。APLとしてall-trans retinoic acid(以下,ATRA),enocitabine, daunorubicinによる寛解導入後,ATRAを中止し,地固め療法を施行した。この間,骨髄はRT-PCRでPML-RARα融合遺伝子(-)。発症後4カ月目に脳脊髄液にAPL細胞の出現を認め,抗癌剤の髄腔内注入にて髄液所見は一時,改善した。しかし,さらに2カ月後,脳脊髄液にAPL細胞が再出現し,脳MRI上,多発性腫瘤を認めた。再度の髄腔内注入,ATRA再開にて,髄液所見,脳内腫瘤は消失した。APLの中枢神経浸潤は稀であったが,ATRAが使用されるようになり,その報告が散見される。本例は,中枢神経系のみの再発を繰り返す特異な経過を示し,ATRAの内服が中枢神経系に対し有効と考えられたので報告する。
  • 久保木 努, 工藤 工, 岩田 暢子, 森本 一平
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1087-1092
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は67歳,女性。既往歴に出血性疾患(-), 輸血歴(-)。水疱性類天疱瘡の治療経過中に第VIII因子インヒビターが陽性になり,四肢体幹を中心に広範な皮下出血,咽・喉頭に著明な粘膜下出血をきたした。気道狭窄・窒息の危険があったが,ステロイドパルス療法およびprednisolone (PSL)·cyclophosphamide (CPA)内服による免疫抑制療法が奏効し第VIII因子インヒビターは陰性化,軽快・退院した。しかし経過観察中に治療を中断したため第VIII因子インヒビターによる出血傾向が再燃し,右手背に巨大血腫・表皮剥離を生じ止血困難に陥った。第VIII因子製剤とステロイドパルス療法の併用で出血は軽減し,CPAパルス療法,PSL·CPA内服により再び第VIII因子インヒビターは陰性化し寛解が得られた。
    水疱性類天疱瘡と第VIII因子インヒビター合併例は稀な病態で,ステロイドおよびCPAによる免疫抑制療法が奏効した興味深い症例であり報告した。
  • 高梨 万美, 角能 庸介, 田畑 恭裕, 日比 成美
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1093-1099
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    抗胸腺細胞グロブリン(ATG), シクロスポリン(CsA)を含む免疫抑制療法を施行し,効を奏した低形成性骨髄異形成症候群(hypoplastic MDS)の1例を経験した。症例は13歳の女児。汎血球減少の精査,加療目的にて紹介入院した。骨髄は高度の低形成を認め,当初重症再生不良性貧血として,ATG, CsA, 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF), メチルプレドニゾロン,ダナゾールの治療を開始したが,治療開始1カ月後の骨髄像にて骨髄細胞に形態異常を認め,また発症時の染色体検査にて46, XX, del(13)(q12;q14)がみられたことからhypoplastic MDSと診断した。治療はそのまま継続し,1カ月後に輸血非依存性となり,3カ月後には骨髄細胞の形態異常も完全に消失した。また,染色体異常も治療開始6カ月目以降検出されなくなった。免疫抑制療法はhypoplastic MDSに対しても有効であると思われた。
  • 繩田 涼平, 篠原 健次, 高橋 徹, 山田 哲也, 香月 憲作
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1100-1104
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    Trisomy-8を伴う不応性貧血の症例が繰り返し起こる発熱を訴えた。口腔内アフタ,発疹,陰部潰瘍および精管炎などの臨床症状を呈した。発熱時の検査所見では白血球増多,CRP上昇および赤沈の促進を認めた。繰り返し行った起炎菌および感染巣に関する検査は陰性であった。HLA検査ではB 51が検出され,不完全型のBehçet病と診断し,プレドニゾロンの投与により治療に成功した。繰り返す発熱発作は,IL-6, IL-8およびG-CSFなどの炎症性サイトカインの血中濃度の上昇による好中球機能亢進による,Behçet病の稀な合併症と思われた。
  • 森 政樹, 田中 孝幸, 秋藤 洋一, 植木 寿一, 中本 周, 上井 雅哉, 照井 康仁, 冨塚 浩, 畠 清彦, 小澤 敬也, 三浦 恭 ...
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1105-1109
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    再生不良性貧血(Aplastic anemia, AA)中等症の53歳女性患者に抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン(Antithymocyte globulin, ATG)を投与したが,投与4日目に吐下血がみられ,治療を中断した。当初,ATG療法に関連した合併症を考慮したが,消化管検索にて出血性病変を認めず,対症療法のみで軽快した。内服のプレドニゾロン(Prednisolone, PSL)を減量中に再び腹痛があり,小腸透視検査にてクローン病と診断し得た。AAに関しては,ATG療法が奏効し,クローン病については,PSLの5 mg隔日投与および経口栄養剤を含む食事療法にて寛解状態を維持している。われわれの検索し得た範囲では,AAとクローン病の合併例の報告はなく,非常に稀である。両者とも自己免疫異常が関与する疾患であり,本症例においては,AAの治療(ATG, PSL)が契機となってクローン病が顕在化したものと推察されたので報告した。
  • 山崎 雅英, 水谷 朋恵, 加藤 みのり, 御舘 靖雄, 斎藤 正典, 森下 英理子, 朝倉 英策, 松田 保
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1110-1115
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    γグロブリン大量投与療法は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の術前などに施行され,有効性の高い治療法と考えられているが,まれに無菌性髄膜炎を合併することがある。われわれは,抗リン脂質抗体症候群合併慢性ITP症例に対し摘脾術施行目的にγグロブリン大量投与を行ったところ,投与3日目に頭痛,嘔吐,発熱を来たし,髄液所見より無菌性髄膜炎と診断し得た25歳女性の1例を経験した。γグロブリン投与の中止により症状は速やかに改善し,髄液所見も軽快した。文献的にITPに対するγグロブリン大量投与に伴う無菌性髄膜炎は比較的少なくそのほとんどが小児例であり,本邦における成人での報告はわれわれの検索しえた限りではこれまで1例しかみられない。臨床症状に乏しい症例もあり,今後成人例でもγグロブリン大量投与を行う際には十分注意すべき合併症の1つであると考えられた。
  • 古川 勝久, 佐藤 勉, 猪原 達也, 栗林 景晶, 山内 尚文, 加藤 淳二, 坂牧 純夫, 新津 洋司郎, 佐藤 昌明
    1999 年 40 巻 10 号 p. 1116-1123
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例:62歳,男性。平成7年1月,Waldenströmマクログロブリン血症(WM)と診断,通院にて,Alkeran, Predonineの治療を継続していた。平成8年1月,発熱,CRP上昇がみられ,近医にて肝膿瘍との診断を受け,当院に2月23日転院となった。肝内,左副腎,右腎門部に腫瘤性病変をCTにて認め,生検では,Diffuse large B-cell lymphoma (DLCL)であり,WMにDLCLが続発した症例と診断した。化学療法をおこなったが,肝脾の腫大が増悪し,間質性肺炎も併発して5月23日死亡した。病理解剖では非Hodgkinリンパ腫が肝,脾臓に広範囲な病変を形成していた。初回入院時骨髄と再入院時の肝由来DNAの免疫グロブリンH鎖再構成パターンが初回と再入院時でまったく異なっており本例のWMとDLCLは別クローン由来であると考えられた。
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