1999 年 40 巻 10 号 p. 1110-1115
γグロブリン大量投与療法は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の術前などに施行され,有効性の高い治療法と考えられているが,まれに無菌性髄膜炎を合併することがある。われわれは,抗リン脂質抗体症候群合併慢性ITP症例に対し摘脾術施行目的にγグロブリン大量投与を行ったところ,投与3日目に頭痛,嘔吐,発熱を来たし,髄液所見より無菌性髄膜炎と診断し得た25歳女性の1例を経験した。γグロブリン投与の中止により症状は速やかに改善し,髄液所見も軽快した。文献的にITPに対するγグロブリン大量投与に伴う無菌性髄膜炎は比較的少なくそのほとんどが小児例であり,本邦における成人での報告はわれわれの検索しえた限りではこれまで1例しかみられない。臨床症状に乏しい症例もあり,今後成人例でもγグロブリン大量投与を行う際には十分注意すべき合併症の1つであると考えられた。