抄録
静岡県伊東市出身の54歳女性。1998年8月10日より咳嗽,発熱が出現し,8月29日当科を受診。左下肺野に肺炎様の陰影がみられたため,同日入院した。入院後肺浸潤影は抗生物質の投与にもかかわらず急速に拡大し,同時に全身のリンパ節および肝,脾の著明な腫大がみられた。さらに,末梢血にアズール顆粒のない,核に切れ込みのあるリンパ球が出現した。HTLV-I抗体320倍と陽性で,サザンブロット法で,HTLV-Iプロウイルスの存在が証明され,ATL (adult T-cell leukemia)と診断した。リンパ節の表面マーカー検査ではCD2+, CD3+, CD4+, CD5+, CD56+, HLA-DR+であった。ただちにLSG-4療法を施行したところ,肺浸潤影は改善し,呼吸困難も消失した。本症例では,通常のATLに比し,CD56+というNK細胞の表面形質を呈したことが珍しい。またATL細胞の浸潤によると考えられる肺の異常陰影でATLが発症したという点でも興味ある症例であった。