臨床血液
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41 巻, 1 号
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臨床研究
  • —移植前の治療歴との関係について—
    八田 善弘, 伊藤 武善, 馬場 真澄, 下島 ひろみ, 宮嶋 剛, 和泉 徹, 堀越 昶, 竹内 仁, 沢田 海彦, 堀江 孝至
    2000 年 41 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    同一条件の慢性骨髄性白血病(CML)と急性白血病(AL)の同種骨髄移植症例(前処置にCY+TBI, GVHD予防にCyA+short term MTXを使用し,GVHDを合併せず,胸部X線写真,臨床所見に異常を認めない)の肺機能を比較することによって,CMLとALの移植前治療がどのように移植後の肺機能に影響を与えるかを検討した。AL群の%VC, DL/VAはともに移植後に有意な低下を認めなかったが,CML群の%VCは移植前112.1±11.5%で移植後200∼300日に93.7±9.4%, またDL/VAは移植前が79.2±14.6%で移植後100日には54.1±10.6%と両者とも有意に低下した。CML群のうち,移植前治療としてブスルファン(BU), インターフェロン(IFN)が投与されている症例の%VCは移植後に有意に低下したが(BU投与群,移植前111.5±11.4%, 移植後100.6±10.7%; IFN投与群,移植前107.6±6.7%, 移植後93.6±9.2%),非投与群では低下しなかった。DL/VAはBU投与群(移植前76.5±13.4%, 移植後57.1±12.5%),BU非投与群(移植前84.6±17.4%, 移植後50.1±7.7%),IFN投与群(移植前89.4±9.7%, 移植後53.9±5.8%),IFN非投与群(移植前74.1±14.3%, 移植後54.2±12.6%)の4群全てで移植後に有意の低下を示したが,IFN投与群で顕著(p<0.01)であった。FEV1.0%とV50/V25はCML群,AL群ともに移植前後で大きな変動を示さなかった。以上よりCMLの移植症例,特にBUとIFNの投与歴のある症例は移植後の肺合併症で通常より強い呼吸障害を生じる可能性があり,注意が必要と考えられる。
  • 大嶺 謙, 和泉 透, 室井 一男, 清水 律子, 今川 重彦, 小松 則夫, 佐々木 龍平, 畠 清彦, 三浦 恭定, 小澤 敬也
    2000 年 41 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)に対するプレドニゾロン(PSL)少量(0.5 mg/kg/日)と常用量(1.0 mg/kg/日)投与法の比較検討を行った。1979年5月から1997年9月までに自治医大血液科においてPSLによる治療を行ったITP 59例のうち,治療後3カ月以上観察可能であった49例について解析した。初回治療として26例にPSL少量,23例にPSL常用量を投与。PSL少量投与群と常用量投与群の完全寛解率はそれぞれ35%/39%(有意差なし)だった。平均入院期間は20日/50日と少量投与群で有意に短かった(p<0.001)。ITPに対するPSL少量投与は,常用量と同様の効果が期待できる上に,入院期間を大きく短縮できる可能性があり,今後検討が必要と考えられる。
  • 守矢 明子, 森 慎一郎, 上 昌広, 松村 有子, 井上 崇, 佐藤 頼子, 中根 実, 大橋 一輝, 秋山 秀樹, 賀来 秀文, 佐々木 ...
    2000 年 41 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    都立駒込病院にて同種骨髄移植を施行した190症例をretrospectiveに解析し,必要入院期間を推定した。本研究では,発熱・週2回以上の輸血依存・経静脈的薬剤投与がない状態を1週以上維持し,肝中心静脈閉塞症,II度以上の急性GVHD, 間質性肺炎,重度肝腎障害の既往がない症例を退院可能と定義した。入院期間の中央値は108.5日であった。移植後70日で82例が退院基準を満たし,100日までに10例が合併症を生じたが,何れも軽症であった。移植後40日で退院基準を満たしたのは89例で,40∼70日に30例,40∼100日に38例が合併症を生じ,16例は緊急治療が必要であった。いずれの時点でも,合併症を生じた症例と生じなかった症例の特徴に明らかな差異はなく,その発症を予見するのは困難であった。移植後70日で退院基準を満たす症例は安全に外来治療が可能であるが,40日の早期退院には注意が必要である。
症例
  • 秋山 秀樹, 井上 崇, 大越 靖, 森 慎一郎, 大橋 一輝, 前田 義治, 佐々木 常雄, 奥山 美樹, 比留間 潔, 坂巻 壽
    2000 年 41 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    都立駒込病院において1989年から1998年9月末の間に造血幹細胞移植が施行された15歳以上の延べ264例のうち47例で水痘ウイルス(VZV)感染症が認められ,皮膚症状以外で発症するVZV感染症が2例認められた。1例は消化器症状より発症,6日目に皮疹が出現した。2例目は心窩部痛より発症。4日目に痙攣発作と髄膜炎を発症するも5日目に皮疹が出現しVZV感染症と診断された。VZV感染症は早期の診断と治療の開始が重要であり,特に皮膚症状以外で発症する場合には診断が遅れることが多く,その病態の認識が重要である。
  • 中井 邦久, 田嶋 健一郎, 岸本 裕司, 桂 薫子, 川村 真代, 山本 義尚, 花田 昌一, 全 勝弘, 尼川 龍一, 藤本 正博, 福 ...
    2000 年 41 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は,26歳女性。1996年10月,AML (FAB: M1)と診断,JALSG AML-95にて加療し,完全寛解を得た。1997年5月,CA (8 g/m2)+CY (120 mg/kg)+TBI (12 Gy)を前処置として同胞間同種骨髄移植を施行した。GVHD予防はCsA+短期MTXで行った。移植後の経過は順調であり,GVHDの合併はみられなかった。移植5カ月後,発熱を契機に両側視力障害が出現した。眼底検査にて両眼網膜に綿花様白斑・網膜出血・網膜浮腫がみられ,網膜血管の多発性血栓形成による変化と診断した。破砕赤血球の出現を伴う貧血と,LDHの増加,腎障害がみられBMT-TMと診断した。CsAを中止し,チクロピヂンとプレドニゾロンを投与した。視力障害や検査値異常は安定化したが,BMT-TM発症3.5カ月後に痙攣発作がみられた。脳MRIには異常なく,FFP輸注およびジピリダモールとアスピリンを投与した。その後の経過は緩慢で病状の急激な進行はなく,発症後13カ月を経過した。眼底異常が生じたBMT-TMは希少であり報告した。
  • 小池 道明, 関川 巌, 吉岡 泰子, 飯田 昇, 廣瀬 俊一, 押味 和夫
    2000 年 41 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    静岡県伊東市出身の54歳女性。1998年8月10日より咳嗽,発熱が出現し,8月29日当科を受診。左下肺野に肺炎様の陰影がみられたため,同日入院した。入院後肺浸潤影は抗生物質の投与にもかかわらず急速に拡大し,同時に全身のリンパ節および肝,脾の著明な腫大がみられた。さらに,末梢血にアズール顆粒のない,核に切れ込みのあるリンパ球が出現した。HTLV-I抗体320倍と陽性で,サザンブロット法で,HTLV-Iプロウイルスの存在が証明され,ATL (adult T-cell leukemia)と診断した。リンパ節の表面マーカー検査ではCD2+, CD3+, CD4+, CD5+, CD56+, HLA-DR+であった。ただちにLSG-4療法を施行したところ,肺浸潤影は改善し,呼吸困難も消失した。本症例では,通常のATLに比し,CD56+というNK細胞の表面形質を呈したことが珍しい。またATL細胞の浸潤によると考えられる肺の異常陰影でATLが発症したという点でも興味ある症例であった。
  • 宇野 佳奈子, 小鹿 学, 宮本 直彦, 鈴木 典子, 犬飼 岳史, 杉田 完爾, 中澤 眞平
    2000 年 41 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は4歳,男児。8月中旬に発熱・嘔吐に引き続き,顔色不良・皮膚の黄染を認めたため入院した。高度の貧血を認め,間接ビリルビン,LDHが高値,ハプトグロビンが低値,直接・間接クームス試験が陽性のため自己免疫性溶血性貧血と診断した。梅毒血清反応は陰性であった。入院2日目からPSLの内服を開始したところ速やかに解熱,黄疸・貧血の改善を認めた。その後PSLを漸減,中止したが貧血の再燃は認められない。退院後の検査で,Donath-Landsteiner (D-L)試験が陽性を示し,発作性寒冷血色素尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria, PCH)と診断した。抗体のサブクラスはIgMで抗I特異性を示した。PCHは冬期に発症する事が多いが,本症例は8月に発症したきわめて稀な症例である。入院前の過剰な冷房への曝露や,入院後の発熱に対するクーリングが溶血発作の発症や遷延化に関与したと考えられる。
  • 安山 雅子, 川内 喜代隆, 杉山 始, 大川 真一郎
    2000 年 41 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は83歳女性。1990年汎血球減少症精査目的に第1回当科入院。再生不良性貧血中等症と診断し,ALGとm-PSLの大量療法を施行。Good responseを得,以後経過観察していたが1993年8月より汎血球減少が進行し,11月第2回入院となった。入院時検査成績:RBC 129×104l, Hb 5.5 g/dl, Ret 23,200/μl, WBC 2,200/μl, Granulo 594/μl, Plat 2.2×104l。骨髄穿刺検査でNCC 2.1×104l, MgK 6.25/μl。再不貧の再燃と考え,G-CSF 125 μg, EPO 6,000 U連日皮下注開始。反応が認められないため,第10病日よりG-CSF 250 μg/day, EPO 12,000 U/dayへ増量。その後投与量を漸減し1995年3月以降は無治療にて経過観察していたが,2年以上にわたり3血球系統の正常化が得られていた。本症例のように投与中止後も長期にわたり3系統の血球改善を維持している報告は少なく,本例のように治療方法の選択が限られている高齢者には,有用で試みられるべき治療法と考えられた。
  • 原 武志, 鶴見 寿, 吉村 光太郎, 竹中 清之, 後藤 英子, 田近 正洋, 澤田 道夫, 村上 啓雄, 森脇 久隆
    2000 年 41 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    われわれは眼窩原発悪性リンパ腫にHPSを合併した2例を経験した。症例1は64歳,男性。組織型はperipheral T-cell lymphoma, unspecified。PCR法にて組織中にEBV-DNAが証明された。臨床病期はIV B。入院時検査成績:WBC 4,700/μl, Hb 12.1 g/dl, Plt 14.6×104l, LDH 951 IU/l, sIL-2R 2,553 IU/ml, ferritin 5998.1 ng/ml。症例2は73歳,男性。組織型はdiffuse large cell, B cell type, 臨床病期はIV B。入院時検査成績:WBC 9,100/μl, Hb 7.7 g/dl, Plt 15.4×104l, LDH 1,043 IU/l, sIL-2R 10,090 IU/ml, ferritin 2079.3 ng/ml。共に著明な発熱および血清サイトカインの異常高値を認めた。特に症例1では症例2と比較してIFN-γの異常高値を認めた。また骨髄には両症例とも活発な血球貪食像を認めた。2例ともCHOP療法を中心とした化学療法を施行されたが一時的な改善を認めたのみで死亡した。眼窩原発悪性リンパ腫にHPSを合併した報告例は本症例を含めて4例のみであり,貴重な症例であると思われた。同時にHPSの発症機序を考える上で興味深いと思われた。
  • —Kikuchi-Fujimoto's disease—
    和野 雅治, 江幡 和美, 正木 康史, 竹下 昌一, 金 昌基, 岡田 順, 斉藤 博美, 小川 法良, 廣瀬 優子, 遠山 龍彦, 菅井 ...
    2000 年 41 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は37歳女性。1997年4月にSLEと診断され,ステロイド剤により良好にコントロールされていた。1999年3月下旬より微熱と右腋窩部痛が出現,4月になり38°C台の発熱があり,顔面紅斑が増悪した。入院とステロイド剤増量により,紅斑は消褪したが発熱は持続,4月下旬には39∼40°Cの弛張熱となり,白血球減少(2,000/ml)と肝機能異常が出現した。その後,頸部・腋窩リンパ節,両側耳下腺・顎下腺腫脹がみられ,4月末の右腋窩リンパ節生検により,組織球性壊死性リンパ節炎の病理診断を得た。5月になり,汎血球減少と肝機能異常が進行,ferritinが増加し骨髄穿刺検査で血球貪食細胞(3%)を認め,血清INFγが著増した。ステロイドパルスにより,約4週の経過で臨床症状・異常検査値が改善した。本症例は,SLEの経過中に組織球性壊死性リンパ節炎を合併発症し,両側唾液腺腫脹と骨髄血球貪食を伴っていた。唾液腺腫脹と血球貪食はともに組織球性壊死性リンパ節炎の一症状と考えられる。過去に類似例の記載はなく,文献的考察を加え報告する。
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