抄録
症例は65歳,男性。1997年9月背部痛と腎機能障害を主訴に当科入院。IgDλ型M蛋白と骨髄に骨髄腫細胞の浸潤を認めIgD型多発性骨髄腫と診断し,DMVM-IFN療法にて部分寛解となった。1998年12月再発しVAD療法にて再び部分寛解となったが,1999年12月左睾丸腫瘤が出現,摘出術施行し骨髄腫の睾丸浸潤と診断された。その後,胸水,縦隔腫瘤がみられ胸腔穿刺検査で骨髄腫の浸潤を認めた。また,脊髄腫瘤と右睾丸腫瘤も出現しVAD療法等の化学療法を行うも無効で2000年6月死亡した。睾丸への腫瘤形成を伴うIgD骨髄腫の報告は稀であり,切除睾丸の病理組織で形質細胞の浸潤と一見大型リンパ腫様の細胞浸潤を伴っており両者の免疫染色の動態が異なるなど興味ある所見を呈した。