臨床血液
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症例
骨髄移植前処置中に精神症状のため移植を中止,その後骨髄非破壊的造血幹細胞移植を施行した慢性骨髄性白血病
中前 博久山根 孝久青山 泰孝山村 亮介島 悦子牧田 香理太田 健介巽 典之日野 雅之
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2002 年 43 巻 7 号 p. 573-577

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抄録

症例は54歳女性。1999年6月,血液検査で異常指摘され,精査にて慢性骨髄性白血病と診断される。インターフェロン投与にてPh染色体が消失しないため,2001年2月15日同種骨髄移植目的で当科入院となる。2月22日よりbusulfan, cyclophosphamideにて前処置開始。busulfan内服3日目に幻覚,被害妄想,幻聴,不眠などの精神症状が出現し,無菌管理を含め移植は困難と判断し中止。その後,約20日経過後も汎血球減少の回復が見られないため,fludarabine, anti T-lymphocyte globulinによる前処置にて2001年4月19日に実弟をドナーとし骨髄移植施行。精神症状悪化を考慮し無菌室入室せずアイソレーターで管理する。移植後第54病日の骨髄異性間FISHにて完全キメラ達成を確認する。精神症状に関しては,抗うつ剤,安定剤でコントロール。経過中,外泊を契機に一時,うつ症状悪化するも抗精神薬の調整,体調の改善とともに精神状態安定化。外来フォロー可能と判断し,2001年9月1日に退院となった。骨髄非破壊的造血幹細胞移植は精神医学的問題を有する造血器悪性腫瘍患者に対して有用な移植法であるものと考えられた。

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© 2002 一般社団法人 日本血液学会
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