2004 年 45 巻 4 号 p. 297-303
造血幹細胞移植後day 30まで生存したのべ53例で,肝中心静脈血栓症Hepatic veno-occlusive disease (VOD)予防として,heparin (10 unit/kg/hr)単独(6例),prostaglandin E1 (PGE1; 5 ng/kg/min)+heparin+pentoxifyllin (PTX; 200 mg/day)(17例),lipo-PGE1 (0.5 ng/kg/min)+heparin+PTX(7例),lipo-PGE1+heparin(23例)を前処置開始から投与し,小児に対する有効性と安全性を後方視的に検討した。McDonaldらによる診断基準を満たしたのは5例(9.4%)で,Jonesらの診断基準を満たした症例は認められなかった。発症率に各予防法間で有意差はなく,VODを発症した5例は全て軽症でVOD予防方法の継続によって軽快した。Lennox症候群を合併した症例にlipo-PGE1で痙攣が誘発された以外は重篤な副作用は認められなかった。小児造血幹細胞移植では,VOD発症率・死亡率ともに20%以上との報告がほとんどであり,今回の積極的な予防法の有用性が示唆される。