臨床血液
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臨床研究
血栓性疾患における低用量アスピリン治療時の便潜血反応の検討
林 滋脇坂 晟
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2005 年 46 巻 4 号 p. 254-260

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抄録

血栓性疾患の治療としてのアスピリン長期投与時の消化管出血を便潜血反応との関連で臨床検討を行った。血栓性疾患49例(男性14例,女性35例,平均年齢76.7歳)に対して,アスピリン81mg(13例は抗血栓薬を併用)を平均88週投与した。便潜血反応は16例(32.7%)に陽性で,大腸憩室症の1例に大量下血が認められた。便潜血反応陽性群の一人当たりのアスピリン総服用量の平均値は60.1gで,陰性群(42.6g)よりも有意に多かった。アスピリンと抗血栓薬の併用群は13例中8例に便潜血が陽性(61.5%)で,アスピリン単独群{36例中8例に陽性(22.2%)}よりも有意に便潜血反応陽性率が高かった。アスピリン単独またはアスピリンと抗血栓薬併用混合群49例と,年齢と性をマッチさせたアスピリン非服用の血栓性疾患群49例との便潜血反応陽性はそれぞれ16例と6例で(オッズ比3.25)前者が有意に高かった。しかし,アスピリン非服用群とアスピリン単独服用群での便潜血陽性率の比較では差はなかった。アスピリンの長期投与時には,大腸憩室症をも念頭に入れ消化管出血に注意し,便潜血反応を行い慎重に観察することが望ましい。

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© 2005 一般社団法人 日本血液学会
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