2007 年 48 巻 2 号 p. 148-150
症例は69歳,女性。活性化部分トロンボプラスチン時間延長(74.3秒)の精査を目的に当科へ紹介入院した。31歳で腎癌に対し左腎摘出術を施行されているが,その際には止血が困難で多量の輸血が必要であった。両親はいとこ結婚。姉妹が3人,子供は2人いるが,いずれにも易出血性のエピソードはない。各種の凝固因子を測定したところ,第XI因子のみに著明な活性低下(1%以下)が認められた。そこで末梢血単核球からDNAを抽出し,第XI因子遺伝子をシークエンスしたところ,コドン400にGGC (Gly)からGTC (Val)へのミスセンス変異がホモで検出された。また,患者の子供2人を検討したところ,APTTはともに正常範囲内であったが,第XI因子活性はそれぞれ62%,57%であった。本邦においては極めて稀な先天性第XI因子欠乏症の一家系を報告する。