抄録
症例は69歳,男性。来院時末梢血に芽球を27.0%認め,細胞表面抗原解析では骨髄系抗原であるCD13が67.3%, 巨核球系抗原であるCD41が24.8%, ペルオキシダーゼ染色陽性などから,巨核球に一部分化した分画を有する骨髄芽球と考えられた。発病約2年前に白血球数,血小板数の増多を指摘され,isolated i (17q)染色体異常を有し,bcr-abl mRNA陰性,肝脾腫の存在,好酸球・好塩基球の増加,細胞の異形成などから,慢性骨髄増殖性疾患/骨髄異形成症候群からの白血化と考えられた。診断時CD34陽性芽球におけるBMI-1陽性率は25.8%であり,白血病細胞はanthracyclineを含む抗癌剤に対し部分的に反応を示し,病勢のコントロールが可能であった。ところが,発病後約半年でCD34陽性芽球のBMI-1陽性率が高値(83.1%)となり,白血病細胞は抗癌剤に不応となった。本症例では白血病細胞のBMI-1の発現は臨床症状,細胞の増殖速度,さらに抗癌剤耐性と良く相関しており,BMI-1の発現が病期および予後を示唆する分子マーカーの一つである可能性が示された。