2011 年 52 巻 1 号 p. 8-13
60歳男性。大動脈弓部人工血管置換術施行後7か月で腸瘻造設を施行したところ創部の止血困難がみられた。腹直筋血腫,骨盤内血腫を合併した。APTTの延長(65.9sec)と第VIII因子活性1%未満,第VIII因子インヒビター19.5BU/mlが認められて,後天性血友病と診断した。著しい血色素の低下が認められ,活性化第VII因子製剤9.6mgを25回投与とステロイドパルス療法を施行した。一般に手術後に後天性血友病を併発することは,手術直後または3か月以内であるが,本例は術後7か月に出現し,特記すべき症例と考えられた。