抄録
症例は81歳,男性。8年前より原発性マクログロブリン血症にて通院加療を受けていた。経過中,気胸,房室ブロックを合併,当初は原病との関連性は疑われなかった。診断3年8ヶ月後に左乳糜胸水貯留を認めた。1年前から貧血,食思不振,倦怠感が強く入院するも,次第に原病が悪化し真菌症の合併により永眠された。剖検では左側乳糜胸水1,300mlに加え,IgM+, κ+のリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)細胞が全身に浸潤していた。特に心臓では刺激伝導系を含む心内膜下,心筋内等に浸潤がみられた。生前の気胸併発時の肺切除標本を再検討したところ,リンパ管の不規則形の拡張,増生と伴にLPL細胞浸潤が確認された。
原発性マクログロブリン血症と乳糜胸水との合併例の報告は,過去6例のみと稀である。さらに本例は,臨床経過から腫瘍とは関連がないと考えられていた所見が,剖検により原病の浸潤に起因する可能性が示された教訓的な症例である。