抄録
免疫不全症の家族歴を有する15歳女児。原因不明の免疫不全症でフォロー中であった。9歳時に突然の黄疸を認め原因不明の劇症肝炎と診断し,1か月後に父からの生体肝移植を施行した。肝移植から5年後より汎血球減少が出現した。移植後より継続していたprednisolone・tacrolimsの増量および顆粒球コロニー刺激因子を投与したが,改善は得られなかった。骨髄生検にて再生不良性貧血と診断し,肝移植から6年後にfludarabine, cyclophosphamide, anti-thymocyte globulin, 低線量の全身放射線照射を用いてHLA一致同胞からの骨髄移植を行った。生着と同時に皮膚急性移植片対宿主病および肝障害を認めた。臓器障害は進行し,移植から30日後に敗血症を併発して死亡されたが,骨髄は生着を得ていた。肝移植後に造血幹細胞移植を施行した症例は稀であり,経過を文献的考察とともに報告する。