抄録
後天性血友病Aの3例を経験し,その臨床病態を検討したので報告する。3例とも高齢(79歳,77歳,68歳)の男性で,皮下出血とAPTTの延長,貧血を認めたため,紹介入院となり,第VIII因子活性の低下(0.9~3.1%), 第VIII因子インヒビターの存在(57.1~173BU/ml)により後天性血友病Aと診断した。症例1と症例2は活性型第VII因子製剤の投与により止血を行い,症例1はプレドニゾロン(PSL)単剤で,症例2はPSLに途中,シクロホスファミドを併用し,それぞれ第VIII因子インヒビターは消失した。症例3は週1回,5サイクルのリツキシマブ(RTX)投与により第VIII因子インヒビターは3.5BU/mlまで低下(後日,消失を確認),この間,特に止血剤を用いることなく止血に成功し,肝細胞癌を治療するため前医に再転院となった。後天性血友病Aは第VIII因子に対するインヒビターが原因とされ,その制御のため第一にPSLが選択されることが多いが,症例によってはRTXも試されて良い治療薬と考えられた。