臨床血液
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症例報告
寛解導入療法中にL-アスパラギナーゼによると思われる劇症肝炎を併発した急性リンパ性白血病
筒井 深雪小池 道明小松 則夫
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2012 年 53 巻 5 号 p. 531-534

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抄録

症例は44歳,男性。発熱,頸部リンパ節腫脹で発症した急性リンパ性白血病(ALL)。JALSG ALL202プロトコールによる寛解導入療法を開始し,第20, 22, 24病日にL-アスパラギナーゼ(L-asp)を投与した。第26病日にビリルビンの上昇と肝機能障害を認めた。第30病日には凝固障害,肝性脳症を認め,劇症肝炎と診断した。血漿交換を施行するも効果なく,第32病日に肝不全のため死亡した。経過から1週間前に投与していたL-aspによる劇症肝炎が原因と考えられた。L-aspによる副作用は過敏症,高アンモニア血症,凝固障害,膵炎,痙攣,アナフィラキシー,肝機能障害,血栓症などである。L-aspはALLやNK/T細胞性リンパ腫など造血器悪性腫瘍の治療に使用される。稀ではあるが,本症例のように重篤な肝障害による死亡例も報告されているので,成人でL-aspを使用した症例について後方視的研究を行い,L-aspによる肝障害や劇症肝炎の危険因子を検索する必要があると思われる。

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© 2012 一般社団法人 日本血液学会
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