2016 年 57 巻 10 号 p. 1908-1912
先天性溶血性貧血は,赤血球の破壊が亢進し貧血に至る単一遺伝子病の一群である。赤血球構成成分の異常による赤血球膜蛋白異常症,血色素異常症および赤血球酵素異常症が三大疾患である。赤血球以外の構成蛋白異常の代表的なものには,消費性凝固障害と血管内溶血を主徴とするUpshaw-Schulman症候群と非典型溶血性尿毒症症候群がある。先天性溶血性貧血の主な症状は貧血,黄疸,脾腫および胆石だがその発症様式と重症度は多彩である。各疾患の原因遺伝子は複数存在するものが多く,その頻度や変異の種類も民族によって異なる。βグロビン鎖病には複数変異による表現型修飾効果が知られ,遺伝子診断が治療選択と長期管理に有用な情報となる。近年,診断困難な溶血性貧血症例に次世代シークエンスを用いた網羅的遺伝子解析を行い,新規原因遺伝子が同定されている。本稿では溶血性貧血の疾患概念と遺伝子診断の考え方について臨床的に概説する。