臨床血液
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特集:臨床血液学 ―最新情報と今後の展望2016(赤血球系疾患)―
鉄剤不応性の鉄欠乏性貧血
川端 浩
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2016 年 57 巻 2 号 p. 104-109

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抄録

鉄欠乏性貧血の主な原因は,鉄の喪失,需要の増大,そして供給不足の3つである。日本では月経による鉄の喪失が最も高頻度にみられる。自己免疫性萎縮性胃炎やHelicobacter pylori感染による萎縮性胃炎も,腸管からの鉄の吸収率を低下させ,鉄欠乏性貧血の原因になる。このほか,最近,TMPRSS6遺伝子の変異に起因する鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(iron-refractory iron deficiency anemia, IRIDA)が報告されるようになった。TMPRSS6は,肝臓に特異的に発現するマトリプターゼ2をコードする遺伝子である。マトリプターゼ2の機能喪失は鉄代謝制御ホルモンのヘプシジンの発現を増加させ,これが赤血球造血系への鉄の供給を減少させる。IRIDAは小球性低色素性の貧血であるが,血清フェリチン値は低下しない。経口鉄剤には不応だが,静注鉄剤にはある程度反応する。確定診断には遺伝子検査が必要なため,実際にはかなりの頻度で存在する可能性がある。

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© 2016 一般社団法人 日本血液学会
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