2017 年 58 巻 12 号 p. 2440-2449
ステロイド抵抗性の移植片対宿主病(GVHD)は依然として極めて予後不良であり,造血幹細胞移植の大きな障壁の一つである。間葉系幹細胞(MSC)は,制御性T細胞の分化促進などの免疫調節作用を有し,ほかの強力な免疫抑制剤とは異なる機序でGVHDへの有効性が期待される。2004年の最初の症例報告以降,ステロイド抵抗性GVHDに対するMSCの有望な結果が多数報告され,本邦でも主要な二つの治験結果に基づき,2015年9月に初の細胞製剤(TEMCELL®)として認可された。現在一部の施設で投与可能となり,全例登録の市販後調査が進められている。非常に高額であるが期待は大きく,実臨床では治験の条件と異なる様々な状況で投与されており,結果を踏まえた適正使用へのガイドライン整備が切望される。また,近年慢性GVHDの治療やGVHD予防にも有効性が報告されている。本稿ではGVHDに対するMSC投与について概説する。