臨床血液
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特集:臨床血液学 ―最新情報と今後の展望2017 (骨髄系疾患)―
骨髄異形成症候群の診断と治療
波多 智子
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2017 年 58 巻 4 号 p. 373-380

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抄録

次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析によりMDSの90%に遺伝子変異が認められ,診療上重要な情報をもたらしている。2016年WHO分類が改訂され,環状鉄芽球を有するMDSに高頻度に認められるSF3B1遺伝子変異が診断に組み込まれた。SF3B1遺伝子変異は予後良好であること,ASXL1EZH2RUNX1,特にTP53は予後不良であるとされる。治療においては,低リスク群にダルベポエチンが使えるようになった。またレナリドミドの作用機序にCSNK1A1の関与が明らかになった。治癒が期待できる唯一の治療法が造血幹細胞移植であり,移植の対象とならない高リスクMDSにはアザシチジンを投与する状況は変わらない。TET2DNMT3AASXL1RUNX1TP53変異は同種移植でも予後不良であり,TP53PTPN11変異はAZAへの反応性にかかわらず生存期間が有意に短い。TP53変異は造血幹細胞移植の成績もAZAの成績も不良であるが,10日間のデシタビン投与がTP53変異症例に良好に反応したことが示された。今後ますます遺伝子診断の重要性が増すと思われる。

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© 2017 一般社団法人 日本血液学会
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