2017 年 58 巻 7 号 p. 787-791
予後不良のクローン性造血障害である骨髄異形成症候群(MDS)には病態を再現し解析する疾患モデルが少なく,新規治療法を開発するためのツールが殆どないのが現状である。近年,次世代シークエンサーを用いたMDSの網羅的ゲノム解析によりde novo急性骨髄性白血病(AML)とは異なる遺伝子異常が次々に発見されたが,遺伝子異常と病態との関連についてはまだ不明な点が多い。我々はMDSおよびMDSから移行したsecondary AML(MDS/sAML)症例から複数のiPS細胞(MDS-iPS細胞)の樹立に成功した。MDS-iPS細胞から再分化した造血前駆細胞には,病期特異的に分化成熟障害が見られた。MDS-iPS細胞は,MDSの腫瘍内多様性および発症・進展機構の解明に大きく貢献できると予想され,同時に創薬スクリーニングにおいて強力なツールになることが期待できる。